星と月と恋の話
しばし三人で、お茶を飲みながら談笑していると。

それは、予期せず置きた。

「…げほっ、げほっ…」

突然結月君のお母さんが、敷布団に手を付き、咳込み始めた。

えっ。

だ、大丈夫?

結月君が、慌ててお母さんに駆け寄った。

「大丈夫?」

「え、えぇ…。げほっ…」

全然、大丈夫に見えない。

そういえば、今日具合が良くないって言ってたよね。

私が来るからって、お母さん無理して…。

「良いから、もう休んでて」

結月君は、お母さんの背中をさすりながら言った。

うん…。私も、それが良いと思う。

「ご、ごめんなさい…。具合、悪いのに…私の相手をして…」

私のせいで、結月君のお母さんの具合が悪くなってしまったら。

あまりに申し訳なくて、結月君に合わせる顔がない。

「い、良いのよ…。ごめんなさい、ちょっと…調子が…」

「ほら、良いから、もう横になって」

結月君はお母さんの身体を支えながら、布団に横たわらせた。

結月君のお母さんは横になるなり、しんどそうに目を閉じた。

あぁ…本当に疲れてたんだ。

そうとも知らず、申し訳ないことをした…。

「す、済みません…」

思わず謝ってしまった私に、結月君のお母さんは目を開けて、私に微笑んだ。

「大丈夫…。唯華さんのせいじゃないわ」

「で、でも…」

「少し休んだら、良くなるから…。…ごめんなさいね、折角来てくれたのに、ちっともお構い出来なくて…」

「そんな…とんでもないです」

具合が悪いのに、ここまで相手してくれただけでも、充分に感謝している。

「何もない家だけど…。せめて、ゆっくりしていって頂戴ね」

「は、はい…ありがとうございます」

私は、結月君のお母さんに頭を下げた。

一方、結月君は。

「…母さん。何かあったら呼んでよ」

「えぇ…分かってるわ、ありがとう」

お母さんの枕元に、そう言い残して。

「居間に行きましょうか、星ちゃんさん」

結月君は立ち上がって、私を促した。

そうね。

これ以上、お母さんに負担かける訳にはいかないもの。

「うん」

私は、結月君のお母さんの申し訳無さそうな顔に一礼して。

お母さんの寝室を出て、三珠家の居間に向かった。
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