星と月と恋の話
…居間でお茶を飲んでいると。

不意に、結月君がもじもじし始めた。

…どうした。大丈夫か?

「あの…星ちゃんさん」

「何だい」

「実はちょっと、その…見てもらいたいものがあるんですが…」

見てもらいたいもの?

ほほう。

「何々?見せてよ」

「でも、その…。…笑わないでくださいね?」

ほほう?

何か、笑う要素があるものなのか。

丁度良いじゃない。

何だかさっきから、湿っぽい空気が続いてて、何となく居心地悪かったから。

ここいらでゲラゲラ笑わせてくれ。

「笑わない笑わない。だから見せて」

「ほ、本当に笑いません?」

「うん。笑いたかったら、心の中で笑うから」

「…やっぱり笑うんですね…」

私も人間だからね。

おかしかったら笑うわよ。当然でしょ。

「わ、分かりました…。じゃあ、持ってくるので…少し待っててください」

「うむ」

結月君は立ち上がって、少し席を外した。

戻ってきたとき、結月君が手に持っていたのは。

薄い紙に包まれた、バスタオルくらいの長い布だった。

…?

何だ、あれ。

「結月君、それ何…?」

「あの…。…覚えてます?前…星ちゃんさん、僕が裁縫がちょっと得意だって言ったら…」

いや、ちょっとどころじゃないでしょ。

「自分の服…縫って欲しいって、リクエストしてくれたじゃないですか」

「え?うん…したけど…」

え、じゃあそれって、まさか。

「もしかして、出来たの?」

「は、はい…。一応…作ってみました」

…結月君。

君は、何故それをもっと早く言わなかったんだい?
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