星と月と恋の話
「見たい見たい!見せて!」

私は、食い気味に結月君に迫った。

まさか本当に作ってくれてるとは。

いや、せがんだのは私なんだけど。

本当に作ってくれるなんて、さすが結月君。律儀〜。

「そ、そんなに期待しないでください。プレッシャーが…」

「さぞや素敵なお洋服なんだろうな〜!」

「プレッシャーを与えないでくださいって…」

冗談冗談。

そんな泣きそうな顔しなくて良いのよ。

「女の子の洋服作るのなんて、初めてですから…。正直自信ないです」

「大丈夫だよ。結月君なら」

「何処から来るんですか?その確信は…」

確信?あるに決まってるじゃない。

だって、あんな素敵なお母様がいるのよ?

そりゃもう、完璧な出来に決まってるわ。

楽しみ〜。

「気に入ってもらえたら良いんですが…」

と言いながら、結月君は薄紙を開いた。

すると。

「うわぁ〜…」

と、私は思わず感嘆の声を上げた。

今の「うわぁ」は、ドン引きの「うわぁ」じゃないよ。

「うわ!何これすごっ!」の意味の「うわぁ」だから。

所謂、バイカラータイプのワンピースだ。

右半身が白地に青のストライプで、左半身は青地に、青紫色の紫陽花と、ちっちゃい金魚が泳いでいる。

これ、模様全部刺繍じゃないの。

襟と袖、ワンピースの裾部分は、多分帯を活用した、お洒落な紺色の布が縫い付けられている。

腰にもベルト風に同じ布が縫い付けれていて、引き締まって見える。

可愛いんだけど、可愛過ぎないお洒落なスタイル。

よく見たら、胸についてる小さなボタンも和柄模様のくるみボタンだ。

手が込んでる。

色んなお店や色んな雑誌で、色んな流行のワンピースを見てきたけど。

こんなスタイルのワンピース、初めて見た。

おっしゃれ〜…!

「かわい〜!何これ!」

「か、可愛いですか?」

「うん!これ結月君が作ったの?本当に?」

「あ、はい…。ベースのワンピースは、いつもの古着から持ってきたんですけど…。その古着を仕立て直して、家にあった着物の余り布を活用して…」

それでこんなリメイクが出来るんだから、もとの古着も幸せだよ。

こんな風に生まれ変われるなら、私も来世は古着が良い。

なんて訳の分からないことを考えるほどに、興奮している。

ヤバいよこれ。めっちゃ可愛いんだもん。

「結月君…」

「な、何ですか?」

「これはね…。お金取れると思う」

私は、真剣な顔で結月君にそう言った。

君は本気でこれを職業にするべきだと思うよ。

「いっそ、フリマサイトでお店始めてみたらどうだろう。『三珠古着リメイク工房』みたいな名前で…。間違いなく儲かるよ」

「そ、そんな大袈裟な…」

大袈裟じゃないわ。

これは、正しく天才的な出来だわよ。

褒める要素しか見つからない。

「今日着てきた…この間買ったばかりの、冬先取り新作ワンピが霞んで見えてきたわ…」

「それは大袈裟ですって…」

「ねぇ、ちょっと着てみても良いかしら」

「あ、はいどうぞ…。もしサイズが合わないようだったら、すぐ直します…」

仕立て屋さんが目の前にいる状態で試着って、なんて贅沢なのかしら。

じゃ、試しにちょっと着てみよう。
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