星と月と恋の話
今日だけで、結月君の多才ぶりに、何度も驚かされてきたけど。

やっぱり多才だわ。

あんな素敵なワンピースを作れる上に。

「こんな美味しいロールキャベツを作れるんだもの。あなたは天才だわ…」

「大袈裟ですよ…。普通のロールキャベツでしょう?」

うちのロールキャベツは、これほど美味しくないわよ。

しかも。

「それに僕、洋食を作るのはあまり得意じゃなくて…。でも、前に星ちゃんさんが、ロールキャベツ好きだって言ってたので…。ちょっと挑戦してみました」

得意じゃないのに、これほど美味しいんだから。

やっぱり天才よ。

「…むしろ苦手なことを聞きたい。結月君、君苦手なことは何なの?」

何もかも得意で、むしろ苦手なことを聞きたいわ。

何かあるの?苦手なこと。

「え、に、苦手なこと…?そうだな…。クラスメイトと話すのが苦手です…」

成程、それは確かに苦手そうね。

良かった。私、人としても女子としても、男の子である結月君に負けっぱなしで。

何一つ勝ってるところなんてないと思ってたけど、唯一、一つだけあったわ。

少なくとも私は、クラスメイトを話すのを苦手に思ったことはないから。

…って、そんなことだけ結月君に勝ったところで、何も嬉しくないわよ。

「結月君は奥手過ぎるのよ。もっとぐいぐい行くくらいで丁度良いの」

「ぐ、ぐいぐいって…」

「イノシシになった気分で」

「い、イノシシ…」

途端に自信をなくす結月君。

駄目か。そうか。

「君はこれだけ多才なんだから、一度皆に受け入れられたら、人気者になれると思うけどなぁ」

「人気者だなんて…そんな…」

「もっと自分に自信を持って。積極的に話しかけるの。ちょっと図太いくらいで良いのよ」

そうしたら、結月君は途端にクラスの人気者よ。

あとは…。

「…全体的にモサッとしてるのが良くないと思う」

「…モサッと…?」

「そう…。髪にワックスでもつけたら、印象変わるんじゃないかしら」

「いや、それはさすがに…」

そう。嫌なのね?

確かに、君がいきなりヘアワックスをつけて現れたら。

多分お母さんもびっくりするわね。

でも、かなり印象は変わると思う。

「他には…そうだ、いっそのこと、髪を茶髪に…」

「あ、そ、そういえば、母さんがあんみつ作ってくれてるんでしたね。持ってきますねー」

逃げた。

逃げたわ、この子。

後でお母さんに言いつけておくから。





…ちなみに、結月君のお母さんが作ってくれたあんみつ。

曰く、結月君にとっては、嬉し懐かし母の味らしいけど。

凄く美味しくて、大満足だった。
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