星と月と恋の話
「何よ?」

「ううん…。ただ、星ちゃんって素直だよねぇ」

はぁ?

「どういう意味?」

「これは手作りのワンピースですよ、って言われて出されて、素直にそれを信じるんだと思って」

信じる、って…。

…信じないの?

「あんなワンピースなんて、自分で作れるはずないじゃん。しかも、あの三珠クンに」

「…!」

…何で?

何で、そう思うの?

ちょっと海咲、あんたひねくれ過ぎじゃないの?

「騙されてるんだよ、星ちゃん。多分、何処かから珍しいデザインのワンピを見つけてきて、自分の手作りってことにして星ちゃんにあげたんだよ」

「何それ。結月君がそんなことして、何の得になるの?」

「そりゃ点数稼ぎでしょ。三珠クンなりに、星ちゃんに気に入ってもらおうと必死なんじゃないの?」

馬鹿にしたように笑いながら、海咲は言った。

更に。

「さすがに、手作りワンピは信じられないよね…。嘘ついてるんだよ、きっと」

真菜までそんなことを言うの。

どうして、そんな疑いが出てくるのか…。

「でも、あれは古着をリメイクして着物の余り布を使って作ったものだって、結月君が…」

「だからぁ、騙されてるんだって。星ちゃんは」

「星ちゃんったら素直なんだから」

そんな…そんなはずないわ。

だって結月君が、そんな下らない嘘をつくはず…。

…あ、そうだ、それに。

「目の前で、ミシン使って直してくれたのよ。袖丈がちょっと長いからって…」

「パフォーマンスだって、パフォーマンス。そう言って、適当にミシン動かしてる振りをしてたんだよ」

「…」

パフォーマンス?あれが?

ちゃんとミシン動かしてたじゃん。それなのにパフォーマンス扱いなの?

「しかも、古着と余り布のリメイクなんて。貧乏臭っ」

「本当ね。誰が着てたか分からない古着なんて、いくらリメイクされてても私は着たくないわ」

「私も無理。なんかデザインも野暮ったいしさぁ。さすが、三珠クンが選んだデザインって感じ」

…何よ、それ。

あれが結月君の手作りだと知る前は、二人共、欲しいって言ってたじゃん。

結月君が私を騙してるなんて、そんなはず…。

「星ちゃんさぁ、素直なのは良いけど、三珠クンの口車に乗せられちゃ駄目だよ?」

「…」

私は海咲の忠告に、何も返事が出来なかった。

すると。

「まぁまぁ、とにかく家デートのノルマは達成したんだから、お疲れ」
 
「あ、そうか。ノルマ終わったんだよね。あとは月2のデートだけかぁ」

「それだって、期限はあと一ヶ月だし」

「終わるのは、丁度クリスマスの頃だね」

あと一ヶ月の期限…クリスマス…。

デート…の、ノルマ…か。

「あとちょっとの辛抱だよ、頑張れ星ちゃん」

「…そうね」

真菜の励ましに、私は小さく頷いた。
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