星と月と恋の話
…と、思っていたら。

「…まさかこの歳で、また動物園に行くことになるとはね…」

私は、思わずそう呟いていた。

小学生の遠足じゃないんだから。

でも、これで決まってしまったのだから、今更どうすることも出来ない。

他にも色々候補は出てたのよ?

ロープウェイのある展望台とか。隣県のテーマパークとか。

隣のAクラスが食べ物系だから、うちのクラスから果物狩りの意見は出なかった。

でも、そういういかにも楽しそうなところは、「学生として相応しくない」的な理由で担任の先生に却下され。

最終的に残った候補は、工場見学とか社会見学の類。

遠足で社会見学なんて、楽しくないにも程がある。

それじゃあ遠足じゃなくて、ただの課外授業じゃないの。

そんな行き先じゃあ、クラスメイト達に不満が出ると思ったのだろう。

クラス委員が底力を見せてくれ、何とか先生を説得したらしく。

妥協に妥協を重ねて、せめて動物園に行こうということで落ち着いた。

先生としては、動物園も学生には相応しくない、と思っていたらしいけど。

隣市にある動物園は、距離的にも近く、他の場所より予算も安く済むということで。

渋々ながら、先生も了承してくれた。

こんな経緯で行き先が動物園に決まった、とクラス委員から説明され。

私達は、それ以上不満を言うことは出来なかった。

動物園でも、社会見学よりはマシ。そう思うしかない。

でも、動物園かぁ…。

小学校のとき、両親に連れて行ってもらって以来、ご無沙汰してるわ…。

そもそも動物園なんて、余程の動物好きじゃないと、定期的に通うようなところではないわよね。

特に隣市にある動物園は、パンダとかイルカとか、目玉になるような動物がいる訳ではなく。

動物園と言えば何処にでもいるような、ありきたりな動物しかいないし。

わざわざ、足を伸ばして見に行くようなところではない。

…なんて、不満をたらたら言ってても仕方ない。

何度も言うように、決まってしまったものはどうしようもないのだから。

「それじゃあ、これから遠足に行く班を決めてもらいます。5人から6人で一つのグループを作ってください」

と、クラス委員が言った。

家庭科の調理実習のときと同じ人数ね。

なら、私が入るグループは勿論。

「宜しくー」

「はいはい、宜しく」

「いつメンだわね」

正樹、隆盛、真菜、海咲、そして私の5人グループ。

いつメン過ぎて、全く代り映えしないわ。

まぁ、いつメンだけに、変に気を遣う必要がなくて良いとも言える。

お互い気心も知れてるし、丁度良いでしょ。

周りを見ても、大体皆、友達同士のグループに分かれてるし。

遠足なんだから、やっぱり仲良い人と行かないとつまんないわよね。

ましてや今回の行き先は、ただでさえつまらなさそうな動物園なんだもの。

せめて、一緒に行くメンバーは楽しい仲間でありたいわ。
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