星と月と恋の話
―――――…出来れば一人で乗りたいと思っていたけど、人数的にそうも行かず。

僕の隣には、クラスメイトの菅野隆盛君が座った。

正直僕は、この人のことをよく知らない。

と言うか、このグループのメンバーのことを、そもそもよく知らない。

精々、家庭科の調理実習のとき一緒になったくらいだ。

菅野君っていうのは確か、ポテトサラダ作ってた係だったっけ。

茹でたじゃがいもをカチカチにしてた人。

それくらいの印象しかない。

僕が知らないってことは、多分、相手も僕のことなんてよく知らないだろうし。

お互い黙ったまま、ぼんやり外の景色でも眺めていれば。

気まずいながらも、目的地には到着するだろう。

…と、軽く考えていたら。




「あのさ、お前…星野と付き合ってるんだよな?」

座席に座り、バスが動き出して数分足らずで。

待っていたかのように、隣の席の人が話し出した。

しかも、非常にぶっきらぼうな態度で。

…なんか面倒なことになったな。

遠足なんてただでさえ面倒なんだから、平穏に今日一日を終えたいと思っていたのに。

初っ端から、面倒臭い匂いしか感じない。
< 174 / 458 >

この作品をシェア

pagetop