星と月と恋の話
「皆、ぶっちゃけ何見たい?」

ぶっちゃけ…。

「私、小動物が見たいわ」

と、私は提案した。

可愛いでしょ?小動物。

ウサギとかリスとか、ヒヨコとか、モルモットとか。

「小動物って、星ちゃん可愛い趣味してるわね」

「何よ。じゃあ真菜は何が見たいの?」

「私はカピバラが見たいわ」

真菜も可愛い趣味じゃない。

「海咲は?」

「私はな〜…。レッサーパンダかなぁ」

海咲も可愛い趣味。

女子達は三人共、可愛い動物をご所望。

一方、男子三人は。

「俺はトラとライオンだな」

と、正樹。

あんたはわんぱくね。小学生の男子みたい。

「俺は鳥類かな…。フラミンゴとかエミューとか…」

と、隆盛。

鳥類か。良いわね。

じゃあ、残るは…。

「結月君は?」

「はい?」

何よ。青天の霹靂みたいな顔して。

自分だってグループのメンバーの一人なんだって、自覚しなさいったら。

家庭科の調理実習のときもそうだったじゃない。

「結月君も、見たい動物がいたら言って良いのよ」

「え…と、何でしょう…。そもそも何がいるのか分からなくて…」

え?

「動物園なんて、来たことないので…」

えぇぇぇぇ。

動物園、来たことないの?

これには私だけじゃなく、他のメンバーもびっくり。

いや、そりゃ私達だって、最後に来たのは何年も前だけど。

それにしたって初めてではないわ。さすがに。

でも、結月君なら有り得る。

映画館もカラオケも行ったことがないんだから、動物園に行ったことがなくても不思議ではないわよね。

物凄く珍しいとは思うけどね。

「ですから、その…。皆さんの行きたいところについていきますから。僕のことは気にしなくて結構です」

「…あ、そう」

と、真菜は生返事。

皆もドン引きした様子だったが、本人がそう言うなら好きにさせよう、みたいなスタンス。

まぁ、動物園にどんな動物がいるのかも知らないんだから、そうするしかないわよね…。

園内マップとか探したら、せめてどんな動物が展示されているのか、確認することも出来るんだろうけど…。

何処に置いてるんだろう、園内マップ。

パンフレット系あるある。何処にでも置いてありそうなのに、肝心なときに見つからない。

時計とかもそうよね。いざ見たいときに限って視界の中にない。

探そうかと思ったけど、その前に。

「じゃ、早速行こうぜ。順路からして、一番近いのは…レッサーパンダだな」

「あ…」

正樹の号令で、皆歩き出してしまったので。

私は園内マップを探すのを諦め。

皆について、園内を歩き始めた。

まぁ良いや。結月君だって子供じゃないんだし…。

見たいものがあったら、自分でそう言うでしょ…多分…。
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