星と月と恋の話
この触れ合い体験コーナーでは、日によって、色んな小動物と触れ合えるらしいけど。

本日のこの時間、私達が触れ合うことになるのは。

「うわぁ〜…。可愛い」

簡単な説明と注意事項を述べた後。

飼育員さんは何匹もの…可愛いうさぎを、私達の前に放してくれた。

一斉に、ぴょこんぴょこんと跳ね回るうさぎ達。

何これ。超癒やされるんだけど?

見てるだけで超可愛い。

でも、このうさぎ達、これから触っても良いのよ。

猫カフェに来たみたい。可愛い。

「やば。超可愛い」

「癒やされる〜」

真菜と海咲も、この反応。

だよねだよね。私もそう思う。

よし、じゃあいざ触ってみよう。

「こっちおいで〜」

私は近くにいた、とりわけ可愛らしい白うさぎに声をかけた。

両手を広げて待機するも。

…うさちゃん、全然こっちに来ない。
 
どころか、そっぽを向いて、たったかたったかとよそに逃げた。

…捕獲失敗。

仕方ない。あの子はちょっと無愛想な…。そう、シャイな子なのよ。

うさぎにだって個体差があるんだから、そういうこともあるわよね。

切り替えていこう。

じゃあ、次の狙いは…あの灰色の子にしよう。

あの子も耳がピンと立って、めっちゃ可愛い。

「おいで〜、遊ぼ」

灰色うさぎの正面に座って、両手を広げて待機。するも。

灰色うさぎは、こちらを一瞥しようともせず。
 
くるりと背を向けて、ぴょんぴょん跳ねて逃げた。

…捕獲失敗。

…うん、仕方ないわよ。うさぎにだって、そのときの気分ってものがあるんだし。

今は、誰にも触られたくない気分だったのよ。

あるわよね、そういうとき。人間でも。

今は放っておいて欲しいとき。うん、あるある。

じゃあ、別のうさぎにしよう。

あの、可愛いクリーム色の毛並みをしたうさぎなんか良いんじゃないかしら。

「さぁ、こっちよ、こっち。おいで」

今度こそ、とばかりに。

クリーム色うさぎの前に座って、笑顔で両手を広げるも。

「うわっ、やべ」みたいな顔をして。

クリーム色うさぎは、その場から緊急離脱。

ぴょこぴょこ飛びながら逃げていった。

…捕獲失敗。 

これで三回目の失敗になる。

…ねぇ、これって、もしかしてだけど。

うさぎの個体差とかじゃなくて。

私のせい、だったりしないわよね…?
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