星と月と恋の話
結月君の、膝の上には。

うさぎが、三匹も乗っていた。

大人しくじっと座って、逃げようとする気なんて全くない。

それだけではない。

そんな結月君の足元には、わらわらとうさぎが寄ってきていた。

さっき私から一目散に逃げた、あの白うさぎも、灰色うさぎも、クリーム色うさぎも。

三匹共、結月君の足元に集まって、まるで早く撫でてと言わんばかりに、結月君の足元をうろうろしている。

他のうさぎ達も同様。

結月君の足元にすり寄っては、撫でてもらうのを待っている。

「はいはい、順番ですからね、順番…。はい、次はあなた…」

その姿は、まるで握手会。

行列の出来る握手会だわ。

な…なんてこと。

「…結月君…。君…」

「は、はい?」

「…実は、動物園に来たことがないっていうのは嘘なんじゃないの?」

「えぇ…?嘘じゃないですよ」

白々しいことを。白状するなら今のうちよ。

「実はこっそり予行練習しまくって、何度もこの触れ合いコーナーに参加したんでしょ」
 
そして、ここの動物園のうさぎと交友関係を深めたのね。

そうに違いない。

でなきゃ、何でそんなにうさぎにモテモテなのよ。

納得行かないわ。

何で結月君はOKで、私達は駄目なの。

心?やっぱり、心の綺麗な人に集まるの?

「本当に初めてですよ…。うさぎを触ったのも初めてです」

「…」

「柔らかい毛並みで、凄く可愛いですね」

…ズルいわ。

君はズルい。

私だって触りたかったのに。

「何が違うって言うの、私と結月君と…同じ高校生じゃない…」

うさぎには、何かが分かっているのかもしれない。

…やっぱり心なのね?

素朴で優しい人のところに、本能的に集まるのね?

つまり私達女子三人は、動物が敬遠するほどに、心がきたな、

…。

…まぁ、あれよ。きっと。

うさぎさんの、今日の気分なのよ。

今日は偶然、結月君に媚びを売りたい気分だったのよ。

ほら、結月君料理作るの上手だし、美味しそうな匂いが染み付いているのかもしれない。

動物にしか分からない、良い匂いがしてるだけなのかも。

そうよ、きっとそう。

そう思おう。

まさか、私の心がきたな、

いやいや。気のせいだから。考え過ぎ考え過ぎ。

…。

…畜生。
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