星と月と恋の話
こうして、全然楽しめないままに触れ合い体験が終わった。

触れ合いも何も、私はちっとも触らせてもらえなかったわよ。

「さて…これで、皆の見たいものは全部見たことになるけど」

と、隆盛が言った。 

「これからどうする?」

そうね…この後…。

小動物も見終わったし、他に見たい動物もいないのよね…。

そう思っていると。

「なぁ、ちょい早いけど、もう昼飯にしねぇ?」

正樹がそう提案した。

お昼?

「まだ11時過ぎよ?」

お昼にしては早くない?

「でも、もう腹減ったんだよ。朝飯軽くしか食べてこなかったからさぁ」

あんたって人は。

「あのねぇ、あんた…」

思わず、小言を言ってしまいそうになったが。

「まぁまぁ、良いじゃん。そこの広場で食べよう」

隆盛が、私を宥めるようにそう言った。

「それに、ちょっと早めに昼飯済ませておくのも悪くないだろ。昼時になったら、多分そこの広場、人で一杯になるぜ」

…言われてみれば、そうかも。

ここの広場は、園内で唯一、ビニールシートを広げてお弁当を食べられるスペースだ。

お昼時になったら、きっと混雑するだろう。

今でさえ、チラホラとビニールシートを広げている家族連れが見られる。

早めにお昼を済ませておけば、もしこの広場が一杯になっても、困ることはない。

まぁ、一理あるわね。

「分かったわよ。じゃ、お昼にしましょう」

「そう来なくちゃ」 

私達は、広場の一角を陣取り。

各々、持ってきたビニールシートを広げた。

動物園でお弁当を食べるなんて…本当、小学生のとき以来だわ。
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