星と月と恋の話
午後からも、私達は時間いっぱい園内を回った。

その間、結月君はずっと、私達の後ろをついてきていた。

何処に行きたいとか、何を見たいとかの要求は一切なく。

それどころか、私達が歓声をあげる中、一人だけ何の感想もなかった。

何も言わず、ただ私達の後ろを付属品みたいについてきた。

だけど、グループのメンバーの誰一人、そんな結月君に声をかけることはなかった。

そもそも、気にかけることもなかった。

彼が後ろをついてきていることにさえ、気づいていないかのように。

私は気づいていた。何となく。

結月君に声かけた方が良いんじゃないかと思いながら歩いていた。

でも、何も言わなかった。

だって、皆何も言わないんだし、気づいてもないのに、私一人が声をかけても…。

何て言うか…お情けで声かけたみたいに思われても嫌だし…。

結局、5人グループ+1人、みたいな感じで。

私達は楽しく一日を過ごせたけど。

結月君にとってどうだったのかは、分からない。

帰りのバスの中で、私は結月君の隣に座らなきゃならないと思っていたが。

「取った〜。皆こっちおいでよ」

海咲が、真っ先に帰りのバスに乗り込み。

一番後ろの、6人がけの席を確保した。

「海咲、ナイス」

「5人で座ろうぜ」

必然的に、私達は一番後ろの席に5人並んで座った。

6人がけの席だから、5人で座ったら、一人分余る。

…しかし。

当然ながら、結月君は私達の隣に座ることはなく。

そして当然ながら、誰も結月君に「ここに一緒に座ろう」とは言わず。

当然ながら、結月君は二人がけの席に、一人で座っていた。

それが当然のことだと言わんばかりに。

私も、何も口出し出来なかった。

そのまま、クラスメイトはそれぞれバスに乗り込み。

誰一人、結月君の隣に座る者はおらず。 

結局彼の隣は空席のまま、帰りのバスは出発した。

私は、また見なかった振りをした。

きっと結月君は、一人で乗りたかったんだろう。

バスが発進するなり、すぐに窓にもたれ掛かって、眠っているようだったし。

疲れてて、誰かと話したくもないのだろう。

だから、誰も隣に座って欲しくなかっただけだ。

そうに違いない…。






「…そういえば、星野の罰ゲームも、あと残り少しだな」

帰りのバスの中で。

隆盛が、そう口にした。
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