星と月と恋の話
「クリスマスイブに…ですか?」

と、問い返す結月君。

「うん。駅前でイルミネーションやってるの知ってる?」

行き先は、私の方で決めてある。
 
毎年この近くにある駅で、かなりの規模のイルミネーションイベントが行われている。

屋台とかもいっぱい出てるけど、イルミネーションを見るだけなら無料だし、結月君も行きやすいんじゃないかと思って。

それにやっぱり…クリスマスと言えば、イルミネーションデートは定番かな、って…。

…まぁ、その後別れ話をするんだけど…。

「えぇ、知ってますよ」

良かった。結月君も知ってるんだ。

「じゃ、一緒に行こう?」

「…良いんですか?」

え?

「良いって、何が…?」

「いえ…折角のクリスマスイブなのに、僕と一緒に過ごして良いのかなって」

ど…。

どういう意味だ、それは。

「何でイブに結月君と過ごしちゃ駄目なの?」

「いえ、駄目とは言ってませんが…。他に優先する人がいるんじゃないですか?ご友人とか…」

…あー…まぁ、それは…。

そりゃ確かに…去年までは、クリスマスは友達と過ごしてたけど…。

「真菜達とはクリスマス当日に約束してるの。だから、イブは空いてるのよ」

と、私は説明した。

嘘ではない。25日にはちゃんと予定が埋まっている。

「ね、お願い。一緒に行こう」

この日に、別れ話をする…予定なんだから。

断られたら困る…。

…と、思っていると。

「分かりました。良いですよ」

「良いの?本当?」

「はい。幸いイブもクリスマス当日も、僕は予定がないですから」

うん、まぁ…君はそうだろうね。

正樹達にも、クリぼっちだとか言われてたし…。

「良かった。じゃ、イブの夕方6時頃に、駅前で待ち合わせね」

「はい、分かりました」

…約束、してしまった。

これで、もう引き返せない。

この日が、私と結月君の仮初めの恋人関係が終わる日だ。
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