星と月と恋の話
クリスマスイブの前日。

いよいよ、明日がラストデートというその日の夜。

何かをする気になれなくて、私は早めにベッドに横になったけど。

ベッドに横になっても、寝付くことが出来ずにいた。

私の頭の中を占めるのは、明日起きるであろう出来事だった。

私は明日、結月君とイルミネーションを見に行く。

そしてその後、彼に別れを告げるのだ。

「あなたと付き合っていたのは単なる罰ゲームで、本気で好きだった訳じゃない。三ヶ月の期間が終わったから別れて欲しい」と。

私は明日、結月君にそう言わなきゃならないのだ。

気が進まない。

気が進まないに決まってる。

結月君と別れたくないから?

そうじゃない。

あれだけ誠実に私と付き合ってくれた人を、裏切ることが怖いのだ。

物凄く、失礼なことをしている気がして…。

…何を考えているんだ、私は。

罰ゲームで結月君に告白したときから、いつかこんな日が来ることなんて、分かってたはずじゃないか。

告白したときは、全然思いもよらなかった。

罰ゲーム早く終われ、くらいにしか思ってなかった。

結月君を傷つけることになるかもしれないなんて、少しも気にしていなかった。

それなのに、今更後悔するなんて。

「…」

私は、何度も枕元に置いたスマートフォンを見た。

先程から何度も、スマホを手に取ろうかどうか、考えてしまっている自分がいる。

今すぐ結月君に連絡して。

やっぱり明日のデート、やめにして欲しいと頼もうか、と。

何でそんな衝動に駆られるんだろう。

私は、現状を維持したいのだ。

あるいは、嫌な瞬間を先延ばしにしたい。

結月君に別れを告げずにいられるなら、そうしたい。

別にこのまま、彼と付き合ったままでも良い…。

…そんな風に考えてしまっている自分に気づいて、私はハッとした。

…何考えてるの、私。

馬鹿じゃない。

あの結月君と…クラス1地味で、冴えなくて…モテない結月君と付き合ってて平気なんて。

有り得ないじゃない。

三ヶ月前の自分のことを、考えてみなさいよ。

あの結月君と三ヶ月も付き合うってだけで、耐えられなかったのに。

今は、別に別れなくても良い、なんて…。

馬鹿なことを考えるものじゃない。

隆盛だって言ってた。私と結月君は釣り合わない。

その通り、釣り合わないのだ、私達は。

大体結月君は、やることなすこと貧乏臭いし、マザコンだし。

デートの行き先と来たら、屋外ばかりでつまらないし。

私と共通する話題なんて、一つもない。

そんな人と付き合うなんて有り得ない。

別れなきゃ。明日、ちゃんと。事情を説明して。
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