星と月と恋の話
…二人きりになって。

「あ、あの、結月君…」

「いや、危なかったですね…。柄の悪いのがいたものです」

と、結月君は事も無げに言った。

そ、そんな涼しい顔して…。

「ご、ごめんね、助けてもらっちゃって…」

あんな、いかにも柄の悪い人に立ち向かうなんて。

結月君だって怖かったでしょうに。

自分の危険を意に介さず、私を助ける為に、間に入ってくれた。

他の人みたいに、見て見ぬ振りをすることも出来たのに。

「いえ、大したことはしてませんよ」

結月君は何事もなかったかのように、そう言って微笑んだ。

…そんな…。

これから…別れ話をしようとしてるのに。

そんな顔しないでよ…。

…。

「…結月君って、喧嘩強かったりするの?」

「え?いや…。…。…握力が強いだけですよ」

…その、長い沈黙は何?

握力が強いだけで、あんなことって出来るんだろうか…?

握力の弱い私には、さっぱり分からないけど。

またしても…最後の最後で…結月君の意外な一面を見つけてしまって。

この後の別れ話が、また気が重くなった。



それでも、私は言わなければならない。
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