星と月と恋の話
「それでその…私が負けちゃって…だから…」

「…」

…その沈黙が怖いよ。

今、何考えてるんだろう?

裏切られた、って思ってるよね?やっぱり…。

罪悪感に押し潰されて、頭がどうにかなりそうだった。

「今日で…期限が終わるから…。その、お別れ言わなきゃと思って…」

私は、俯きながらそう言った。

結月君の顔を正視出来なかった。

お別れ…そう、お別れなんだよね…これで…。

もう金輪際、恋人として会うこともなくて…。

三ヶ月前までは、それが当たり前だったのに。

何で今はこんなに…胸が締め付けられるような気持ちになるんだろう。

「ご、ごめんね、本当…。わ、悪気があった訳じゃないの。最初に…正樹が言い出しっぺで、私達もそれに悪ノリしちゃって、引き返せなくなったって言うか…」

そんな気持ちを隠すかのように、私は言い訳を重ねた。

「本当悪かったと思ってる…。ご、ごめん…。あ、そ、そうだ、これ…お詫びにと思って、ケーキ…。お母さんと食べて…」

私は、持ってきた手土産のケーキを結月君に渡した。

「…」

半ば呆然としている結月君に、私はケーキの入った紙袋を握らせた。

せ、せめてこれくらいは受け取ってもらわなきゃね。

「え、えっと…あの…そ、そうだ。ワンピース…ワンピースのお代は、やっぱりちゃんと払うよ。いくら払えば良いかな…」

「…」

「そ、その…本当にも、申し訳ないとはおもっ、」

「やっぱり、三ヶ月だったんですね」

「…え?」

いきなり、結月君が返事をして。

てっきり動揺しているだろうと思ったのに、結月君は思った以上に冷静で。

顔に、笑みを貼り付けていた。

その表情に、私は思わずぞっとした。

どうしてそんな風に笑えるの?

それに、三ヶ月だった…って…?

「最初の一ヶ月が過ぎたとき、何も言わないから、三ヶ月か半年なんだろうと…。罰ゲームで半年は、さすがに長過ぎると思ってました。やっぱり三ヶ月だったんですね」

「…え…?」

「罰ゲームの期限ですよ。いつ終わるんだろうって、ずっと考えてました」

いつ終わる…って…。

真実を告げたのに、全く狼狽えていない結月君。

それどころか、微笑みさえ浮かべている。

もしかして…そんな…。

「き、気づいてたの…?」

私が、罰ゲームの一環で結月君と付き合ってたこと。

その期限は三ヶ月だったこと。

「知ってて、私と付き合ってたの…?」

「…むしろ、あなたは何で僕が気づいてないと思ってたんですか?」

にこりと微笑むその姿に、私は背筋が冷たくなかった。

…まさか。

ずっと…気づいていたなんて。

「い、いつから…」

「最初からですよ。三ヶ月前、あなたがある日突然、僕に告白してきたその瞬間から気づいていました」

「…!」

そ、そんな…。

衝撃の事実を伝えるのは、私の方だと思っていた。

でも、逆だった。

衝撃の事実を伝えたのは、結月君の方だった。
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