星と月と恋の話
「最初の瞬間から気づいてました。でなきゃ有り得ませんもんね。僕みたいな…地味で冴えないクラスメイトに告白するなんて、罰ゲームでしか有り得ない」

「…」

「大して会話したこともない、むしろあなたは、それまで僕のことを避けてたじゃないですか。話したくもなかったんでしょう?クラス1の嫌われ者なんかと」

身体の震えが止まらなかった。

何も言い返すことが出来なくて、私は黙っていた。

「そんな相手からいきなり告白されて…喜ぶと思いました?そんなに馬鹿だと思われてたんですか?いいえ…何も考えてなかったんでしょう?自分の発言が、言動が、相手を傷つけることになるかもしれないなんて」

「…」

「下らない友達と、下らない罰ゲームを思いついて。そんな下らない理由で、他人を傷つけて平気でいられる。あなたはそういう人です。あなたと、あなたのご友人は」

「…」

「あなたは僕のことをずっと蔑んでたんでしょう?知ってますよ…。僕みたいな、地味で冴えないクラスの嫌われ者は、意外と周りをよく見てるんですよ。自分が蔑みの目で見られていること、ずっと前から自覚していました」

結月君は、とうとうと語り続けた。

私がずっと知らなかったことを。

結月君がずっと考えていたことを。

知らない方が、ずっと幸せだったことを。

隠し事をしているのは私だけだと思っていた。

でも、そうじゃなかった。

結月君も負けないくらい、私に隠し事をしていた。

いや、そうじゃない。隠してたんじゃない。

ただずっと黙っていただけだ。

「初対面じゃないんですよ。中学生のときから同じ学年にいるのに。いきなり告白されて、真に受けると思ったんですか?そんな馬鹿だと思われてたんです?」

「…」

「馬鹿なのはそっちでしょう?僕は確かに、地味だし、冴えないし、あなた方に蔑まれても仕方ないかもしれません。でも…少なくとも僕は、あなたほど馬鹿じゃない。下らない罰ゲームで他人を傷つけ、こんな…お詫びのケーキ一つで償えると思ってるあなたほどは」

…何も言い返せない。

事実だから。全部。

震えるばかりで、私は何も言えなかった。

自分の愚かさに…今頃気づいたって。

何もかも、全部遅い。

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