星と月と恋の話
更に結月君は、私がこれまでずっと忘れていたことを口にした。
「あなたは馬鹿だから、どうせ覚えてないんでしょう?僕達、中学二年生のとき同じクラスだったんですよ」
「…あ…」
そう言われて、初めて思い出した。
…そうだ。
中学一年生のときに、星屑学園に入学して。
同じクラスになるのは今年が初めてじゃない。
確か、中学生のときに一度…同じクラスになっている。
そんなことさえ思い出せないほどに、私は馬鹿だった。
結月君の言う通り。
「しかも、二学期のとき…席替えで隣の席になったことがあるんです。覚えてます?…覚えていないようですね。その様子では」
…当然だ。
覚えているはずがない。私は馬鹿だから。
「そのときのこと、馬鹿なあなたは忘れてるんでしょう。でも僕は覚えてますよ。自分が何をしたのか、覚えてないんでしょう?」
「そ…れは…」
「良いんですよ、別に。僕のことなんて、虫けらの一匹としか思っていなかったんだから。虫けらと隣の席になったなんて、覚えてませんよね。だから教えてあげます」
「…」
「僕の隣の席に座ったあなたは、僕が挨拶しても無視をした。露骨に嫌そうな顔をして、そそくさと逃げていった。あなたの馬鹿なお友達のところに。そして、僕が聞いているかもしれないことなんて、考えもせず言いました」
「…」
「『あんなつまんない人の隣の席なんて無理。耐えられないから代わってよ』ってね。お友達は笑いながら『お疲れ』とか『運が悪かったね』と言ってました。…ね?覚えてないでしょう?」
…覚えていなかった。
自分がそんな、酷いことを言ったなんて…。
でも、言ったのかもしれないと思ってしまう。
あの頃の…愚かな私だったら…。
平気で…結月君を傷つけるようなことを…。
「あなた方みたいな人種は、いくら他人を傷つけてもすぐに忘れてしまう。僕らみたいな虫けらを踏みにじることを、何とも思ってないから。平気で蔑み、笑い者にし、そしてすぐにそのことを忘れてしまう。…だから、そんな下らない罰ゲームに参加したんでしょう?」
「…そ、それは…」
「でも、言われた方はずっと覚えている。傷つけられた人間は、自分が傷つけられたことを決して忘れない。いくらあなた方が忘れようとも、僕達は忘れない。傷つけられてついた傷は、絶対に癒えることはないから」
結月君の目には、蔑みが滲んでいた。
彼は私を見下していた。
結月君にそんな目で見られたことに、いつも優しいだけの彼にそんな目で見られたことに…私は背筋が凍った。
それは怒りだった。
これまでずっと、クラスのはみ出し者扱いされてきた人間の、誰にも言えない憎悪だった。
「あなたは馬鹿だから、どうせ覚えてないんでしょう?僕達、中学二年生のとき同じクラスだったんですよ」
「…あ…」
そう言われて、初めて思い出した。
…そうだ。
中学一年生のときに、星屑学園に入学して。
同じクラスになるのは今年が初めてじゃない。
確か、中学生のときに一度…同じクラスになっている。
そんなことさえ思い出せないほどに、私は馬鹿だった。
結月君の言う通り。
「しかも、二学期のとき…席替えで隣の席になったことがあるんです。覚えてます?…覚えていないようですね。その様子では」
…当然だ。
覚えているはずがない。私は馬鹿だから。
「そのときのこと、馬鹿なあなたは忘れてるんでしょう。でも僕は覚えてますよ。自分が何をしたのか、覚えてないんでしょう?」
「そ…れは…」
「良いんですよ、別に。僕のことなんて、虫けらの一匹としか思っていなかったんだから。虫けらと隣の席になったなんて、覚えてませんよね。だから教えてあげます」
「…」
「僕の隣の席に座ったあなたは、僕が挨拶しても無視をした。露骨に嫌そうな顔をして、そそくさと逃げていった。あなたの馬鹿なお友達のところに。そして、僕が聞いているかもしれないことなんて、考えもせず言いました」
「…」
「『あんなつまんない人の隣の席なんて無理。耐えられないから代わってよ』ってね。お友達は笑いながら『お疲れ』とか『運が悪かったね』と言ってました。…ね?覚えてないでしょう?」
…覚えていなかった。
自分がそんな、酷いことを言ったなんて…。
でも、言ったのかもしれないと思ってしまう。
あの頃の…愚かな私だったら…。
平気で…結月君を傷つけるようなことを…。
「あなた方みたいな人種は、いくら他人を傷つけてもすぐに忘れてしまう。僕らみたいな虫けらを踏みにじることを、何とも思ってないから。平気で蔑み、笑い者にし、そしてすぐにそのことを忘れてしまう。…だから、そんな下らない罰ゲームに参加したんでしょう?」
「…そ、それは…」
「でも、言われた方はずっと覚えている。傷つけられた人間は、自分が傷つけられたことを決して忘れない。いくらあなた方が忘れようとも、僕達は忘れない。傷つけられてついた傷は、絶対に癒えることはないから」
結月君の目には、蔑みが滲んでいた。
彼は私を見下していた。
結月君にそんな目で見られたことに、いつも優しいだけの彼にそんな目で見られたことに…私は背筋が凍った。
それは怒りだった。
これまでずっと、クラスのはみ出し者扱いされてきた人間の、誰にも言えない憎悪だった。