星と月と恋の話
結月君は、心底軽蔑した眼差しで私を見た。

「ズルいですよね。自分が不利になったら、泣き出して逃げて…。これまでもそうやって、泣いて許されてきたんですか?」

「そ、そんな…違う…」

私は必死に涙を拭いながら否定した。

泣くな、何泣いてるんだ私は。

泣いて良い立場じゃないのに。

それなのに、どうしても涙が止められなかった。

そんな私に、結月君は相変わらず軽蔑の眼差しを向けていた。

「知ってますか?あなた方に傷つけられた人も、あなた方が嘲笑って見下してきた人も、そうやって人知れず泣いてきたんですよ。目に見えないところで」

「…」

「それなのにあなたと来たら。ちょっと反撃されたら、世界で一番不幸みたいな顔をして泣きじゃくって。本当に卑怯。狡賢い。控えめに言って最低って奴ですね」

馬鹿にしたような笑顔でそう言われて、私は余計、涙が止められなくなった。

結月君にこんなこと言われてるのが悲しいんじゃない。

優しいはずの、優しかったはずの結月君に、こんなことを言わせてしまっているのが…悲しくて堪らない。

結月君をこれほどまでに追い詰めたのは、他でもない私なのだ。

私の愚かさが、彼にこんなことを言わせているのだ。

「三ヶ月間、散々馬鹿にしてくれてありがとうございました。貧乏臭い奴だと、女々しい男だと、散々腹の底で馬鹿にしてたんでしょう?」

「…ううん…そんなことない」

私は首を横に振った。

それだけは違う。

そんな風には思ってなかった。

本当に、心から尊敬してた。

でも、そんな私の言葉は届かない。届くはずがない。
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