星と月と恋の話
とりあえず、スマートフォンに三珠クンのメールアドレスを登録する。

えぇと…メルアドの交換なんて久々だから、やり方が…。 

おたおたしていると、三珠クンが。

「…あの、星野さんって」

「え?」

…初めてじゃない?

三珠クンの方から話しかけてきたのって。

「下の名前…何て言うんでしたっけ」

あ、私のこと?

「唯華(ゆいか)だよ。星野唯華」

「あ、唯華さん…そうですか。…クラスメイトが下の名前を呼んでるの、聞いたことがなかったので…」

それは、確かにそうかも。

「大体皆、私のこと星ちゃんって呼ぶからね。中等部の頃からのあだ名なの」

皆呼びやすいって言ってくれるし。私もこのあだ名、嫌いじゃない。

かと言って…三珠クンに星ちゃん呼びされると思うと、ちょっと引くけど…。

でもまぁ…下の名前で気安く呼ばれるよりはマシか。

…それはともかく。

私も、三珠クンの名前登録しなきゃ。

上の名前は三珠…下の名前は確か結月君だっけ。

…結月君か…。

「ねぇ、私三珠クンのこと、結月君って呼んで良い?」

と、私はふとした思いつきを口にした。

「え…」

「名字で呼ぶより呼びやすいし。結月って良い名前じゃん」

これは、素直に本心だった。

顔は身なりはともかく、名前はそこそこ格好良いんだから。

下の名前で呼ぶ方が彼氏っぽい、って理由もあるけど。

「…」

三珠クン、改めて結月君は。

ポカンとして、私のことを見つめていた。

…え、何その反応。

嫌なの?駄目なの?

馴れ馴れしいとか思ってる?

私としては、男友達を下の名前で呼び捨てにするくらいのフランクさは、当たり前だと思ってるんだけど?

一昔前の恋愛漫画じゃないんだからさ。

「…なんか、駄目なの?」

「えっ…。いや…駄目じゃないです」

あ、そう。

じゃあ遠慮なく。

それから。

「結月君も、星ちゃんって呼んで良いよ」

と、私は言っておいた。

本当は、彼氏でもない、男友達でもない結月君に。

馴れ馴れしくあだ名で呼ばれるのは…ちょっとモヤッとするけどさ。

だからって、下の名前で唯華、なんて呼ばれたら多分背中がゾワッとするから。

だったら、あだ名で呼ばれた方がマシ。

「え…。と、じゃあ…星ちゃん…さん」

「…何でさん付け…?」

「…」

…馴れ馴れしくないのは、有り難いけど。

だからって、いくらなんでも距離遠過ぎない?
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