星と月と恋の話
…裏切られたと思ったのだ。

これは罰ゲームなのだと、星野さんに告げられたとき。

彼女との関係が、ただの罰ゲームの関係であることは知っていたのに。

知っていたはずなのに…。

それなのに僕は、彼女にネタばらしされて、裏切られたと思った。

何でそんな風に思うのか。

僕はほんの少しだけ、期待していた。

心の何処かで。

確かに僕達は、罰ゲームの関係で始まったのかもしれないけど。

でも、もしかしたら、もしかしたら、星野さんの気持ちは本当なんじゃないかって…。

…。

「…馬鹿ですか、僕は」

一人、溜め息を溢した。

なんてらしくないことを考えるのか。

有り得ないだろう。そんなこと。

本当に下らない。無意味な三ヶ月だった。

それがやっと終わったのだ。長かった。

明日からは、またもとの自分に戻ることが出来る。

やっと、僕のいつもの日常に…。

星野さんみたいな人種にとっては、僕の日常はとてつもなくつまらないものに見えるのだろうが。

紛れもなく、僕にとっては大事な日常なのだ。

誰に後ろ指を指されることもない。

馬鹿にしたい人間がいるなら、勝手に馬鹿にしていれば良い。

「母さん、ただいま」

家に帰り着くなり、僕は母の寝室に入った。

布団に横になっていた母は、驚いたように起き上がった。

「起きなくて良いよ、寝てて」

「もう戻ってきたの…?星野さんとイルミネーションを見に行ったんでしょう?」

母は僕の注意を聞かず、起き上がったまま尋ねた。

あぁ…うん。

「行ってきたよ」

「もう良いの?折角行ってきたのに…」

「イルミネーションって言っても、そんなに広くないから。一周するのに10分かからないよ」

まさか、あんな酷い別れ話をしてきた、とは言えず。

僕は何事もなかったように振る舞った。

…つもりだった、けど。

「…大丈夫?結月。星野さんと何かあったの?」

「え?」

自然な、いつも通りの態度で振る舞っているつもりなのに。

何故か、母は心配そうな顔で僕を見ていた。

さすが、僕の母親をやって16年。

馬鹿な星野さんと違って、そう簡単には騙されてくれないか。
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