星と月と恋の話
「何かって、何?何もないよ」
「でも…何だか悲しそうな顔してるから」
悲しそうな顔?まさか。
むしろ清々しい。
「何それ。気のせいだよ」
「…」
「それより、夕飯作らないと。ちょっと待ってて」
僕は強引に話を終わらせて、立ち上がった。
しかし、母は相変わらず心配そうな顔をしていた。
「…本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ。どうしたの、いきなり」
「ううん…。何もないなら良いんだけど」
「…」
「あなたは何かあっても、何でも隠そうとするでしょう?だから心配なのよ。一人で抱え込んで、無理してないか」
…さすが。
…よく分かっていらっしゃる。
だけど…だからこそ、心配かけたくないのだ。
「してないよ、無理なんて」
「…そう…?」
「うん」
僕が心配をかけたら、母の具合が悪くなるだけだ。
余計な心配は、出来るだけさせずにいたい。
「…あ、そうだ。今日は準備してないから、クリスマスメニューは明日で良い?ケーキとローストチキン作るよ」
今日は外出していたから、クリスマスの夕食を作る時間がなかった。
ケーキ…馬鹿らしい「お詫びの品」のケーキはもらったけど、あれは突き返してしまったし。
明日、僕が手作りのケーキを作ろう。
今日もらったあのケーキが、例えどんなに高級店のお高いケーキであろうとも。
絶対にあんなもの、もらってたまるものか。
それなら、僕が作ったド素人のケーキの方が、遥かに気分良く食べられるというものだ。
「そうね。それは良いけど…」
「…けど?」
「星野さんとケーキ食べてこなかったの?折角イブに遊びに行ったのに」
また星野さんか。
厄介なことに、母は星野さんがお気に入りなんだよな。
僕が珍しく、友達と称して家に連れてきたから。
今思えば、あれは失敗だった。
いくら連れてきて欲しいと言われても、のらりくらりと躱すべきだった。
まさか、母があんなに気に入るとは思わなかったから。
もう彼女とは、何の接点もなくなったこと。
母に感づかれないように、注意しないといけないな。
でもまぁ、あと一学期の辛抱だ。
来年度になったらクラス替えがある。
星野さんとは別のクラスになったと言い張って、そのままフェードアウトしたことにしよう。
「ないない。外も暗いし、イルミネーションだけ見てすぐ帰って来たよ」
「あら、残念…。あの子、また連れてきてね」
それはない。
でも、僕は微笑んでみせた。
「分かった。また都合の良い日が見つかったら、声かけてみるよ」
「えぇ」
申し訳ないけど。
彼女がこの家を訪ねてくることは、もう二度とないのだ。
「でも…何だか悲しそうな顔してるから」
悲しそうな顔?まさか。
むしろ清々しい。
「何それ。気のせいだよ」
「…」
「それより、夕飯作らないと。ちょっと待ってて」
僕は強引に話を終わらせて、立ち上がった。
しかし、母は相変わらず心配そうな顔をしていた。
「…本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ。どうしたの、いきなり」
「ううん…。何もないなら良いんだけど」
「…」
「あなたは何かあっても、何でも隠そうとするでしょう?だから心配なのよ。一人で抱え込んで、無理してないか」
…さすが。
…よく分かっていらっしゃる。
だけど…だからこそ、心配かけたくないのだ。
「してないよ、無理なんて」
「…そう…?」
「うん」
僕が心配をかけたら、母の具合が悪くなるだけだ。
余計な心配は、出来るだけさせずにいたい。
「…あ、そうだ。今日は準備してないから、クリスマスメニューは明日で良い?ケーキとローストチキン作るよ」
今日は外出していたから、クリスマスの夕食を作る時間がなかった。
ケーキ…馬鹿らしい「お詫びの品」のケーキはもらったけど、あれは突き返してしまったし。
明日、僕が手作りのケーキを作ろう。
今日もらったあのケーキが、例えどんなに高級店のお高いケーキであろうとも。
絶対にあんなもの、もらってたまるものか。
それなら、僕が作ったド素人のケーキの方が、遥かに気分良く食べられるというものだ。
「そうね。それは良いけど…」
「…けど?」
「星野さんとケーキ食べてこなかったの?折角イブに遊びに行ったのに」
また星野さんか。
厄介なことに、母は星野さんがお気に入りなんだよな。
僕が珍しく、友達と称して家に連れてきたから。
今思えば、あれは失敗だった。
いくら連れてきて欲しいと言われても、のらりくらりと躱すべきだった。
まさか、母があんなに気に入るとは思わなかったから。
もう彼女とは、何の接点もなくなったこと。
母に感づかれないように、注意しないといけないな。
でもまぁ、あと一学期の辛抱だ。
来年度になったらクラス替えがある。
星野さんとは別のクラスになったと言い張って、そのままフェードアウトしたことにしよう。
「ないない。外も暗いし、イルミネーションだけ見てすぐ帰って来たよ」
「あら、残念…。あの子、また連れてきてね」
それはない。
でも、僕は微笑んでみせた。
「分かった。また都合の良い日が見つかったら、声かけてみるよ」
「えぇ」
申し訳ないけど。
彼女がこの家を訪ねてくることは、もう二度とないのだ。