星と月と恋の話
おまけに。

「…」

「…」

「…」

「…」

…折角、お互いの呼び名が決まったのに。

この沈黙の辛さ。

早くも共通の話題に困ってる。

何なら話が合うんだろう…。

私がハマってることとか、知ってることとか、ことごとく結月君には縁がないような…。

どんな話題なら食いついてくるんだろう。

あ、そうだ。

結月君って、いかにも陰キャなオタって感じだし。

ネットゲームとかするのかな。

私よく知らないんだけど。ネットゲーム。

でも、この話題を振っちゃって良いのかなぁ?

よくあるじゃん、オタク系の人って。

自分の守備範囲の話題が来たら、もう水を得た魚みたいに怒涛の如く喋り出す、みたいな。

どうしよう。萌え系の女の子のフィギュアとか集めて、にやにや鑑賞してるタイプの人だったら。

有り得る。結月君だったら有り得る…。

…うぇ。

私、そういう人って、生理的に無理なんだけど…。

でも、よく考えてみたら。

裏を返せば、これってチャンスかも。

このまま話題のないまま、沈黙が続くよりは。

ひたすら、一人で結月君に語らせておいた方が良いのでは?

私はほら、介護施設の職員みたいなつもりになって。

結月君の長々とした一人語りを、適当にうんうん相槌打ちながら、聞いている振りをする。

そうすれば、少なくとも沈黙の気まずさに耐える必要はなくなる。

我ながら、ナイスアイディア。

よし、早速これを実行に移してみよう。

「…結月君って、趣味は何なの?私はよく知らないんだけど…ネットゲームとか?」

どうだ。

オタクの人だったら、それはもう目を輝かせて。

水を得た魚のように、ペラペラと喋り始め、

「…ネットゲーム?」

…なんてことはなかった。

むしろ、結月君まで首を傾げていた。

私も知らないし、結月君も知らなかった。

あれぇ…?私、話題提供間違えた?

結月君みたいなタイプは、深夜にネットゲームに夢中になってるんじゃないの?

もしかして、私のただの偏見でしかなかった?
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