星と月と恋の話
まず一つ目。

「…クリスマス、今日なんですけど。まだ決めてないんですか?」

クリスマスプレゼントなのに、クリスマス当日の今日、チラシを眺めてて良いんですか。

「年末年始に娘が泊まりに来るから、そのときに渡そうと思って」

あぁ、成程そういうことですか。

時期外れだなぁ…。

で、それはともかくもう一つ、気になることがある。

「…そりゃ僕も子供ですけど。それは否定しませんけど。でもお嬢さんとはかなり歳が離れてるんですよ?僕の意見は参考にならないでしょう」

「そうか?そんなに離れてたか」

「一回り離れてますよ」

十歳以上年下なんだから。

あなた、出会った頃の時点で僕の成長が止まってると思ってません?

「でもまぁ、子供なのは一緒だから良い」

何が良いんですか。

…まぁ、クリスマスプレゼントの相談くらい、いくらでも乗りますけど。

特に今は、別のことで頭の中をいっぱいにしたい気分だから丁度良い。

「ちなみに、今のところ候補は何を考えてるんですか?」

「そうだな…。クリスマスツリーとか」

今日、クリスマス当日なんですけど。

クリスマスが終わった数日後に、今更ツリーを渡されても。

活躍するの、来年じゃないですか。

「今更ツリーもらったって、使うのは来年じゃないですか。要りませんよ」

「だ、駄目なのか…?じゃあ、菓子の方が良いのか?…草餅とか…?」

「随分と渋い趣味のお嬢さんですね…」

草餅で喜ぶ幼児。なかなかいないと思う。

それに。

「小さい子にお餅なんて食べさせて、喉に詰まらせたらどうするんですか」

「そ、そうか…。確かに…。…なら、どうしようか…」

「…」

…一生懸命…考えてるのは、分かるんだけど。

何だろう。一生懸命の方向性がズレてると言うか。

そうなんだけどそうじゃない感が強い。

これだったら、まだ僕が考える、つまらないクリスマスプレゼントの方がマシかもな。

加賀宮さんのお嬢さんは、一体何を欲しがっているのやら…。

「本人には聞いてみなかったんですか?」

「ん?」

「お嬢さん本人に。何が欲しいか聞かなかったんですか」

こういうことは、本人に直接聞くのが一番。

サプライズではなくなるけど、失敗することもない。

変なものプレゼントして、期待を裏切る方が悪いだろう。

しかし。

「聞いてみたが…『パパに任せる』と言われた」

「…」

…成程。

あなたのお嬢さんは、なかなかの難敵ですね。
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