星と月と恋の話
「家で?…そうですね。料理をしたり、掃除をしたり、裁縫をしたり…」

…家事…?

「課題が出たときは課題をやって、あとは授業の予習とか…」 

…勉強…?

「他にやることがないときは、縁側に座って、庭を眺めたりしてます」

…何それ。

うちのおじいちゃんみたい。

退屈だ。私だったら、一日でも耐えられないくらい退屈だ。

まさか今時の高校生が、そんな生活を送ってるなんて。

真面目な優等生の生活だね。

そういや結月君って、成績は良いんだよな。

確か、うちの学年の、成績優秀者に送られる学費免除枠は、結月君なんじゃなかったっけ。

それを維持したいから、必死に勉強してるってこと?

じゃあ、塾とかも頻繁に通ってたりするのかなぁ。

成程、それはそれで忙しいよね。 

そりゃもう、スマホで遊んでる暇もないくらい…。

…って、それとこれとは別だよ。

スマホは普通、皆持ってるものでしょ。

学費免除枠とか、そんなの関係ない。

「そ、そう…。真面目なのね、結月君…」

「そうですか?自分では全く…」

真面目って言うか…。

…つまんない人だと思う。

毎日、何を楽しみに生きてるんだろう…。
 
「それ…楽しいの?つまらなくない?」

一応、そう聞いてみたけど。

「?別に…つまらないと思ったことはないですけど。つまらないように見えますか?」

うん、見えるよ。

と、声を大にしては言えない。

そうだよね。本当につまらないなんて思ってたら、今頃そんな生活してないって。

結月君はそれで満足だから、そんな毎日を送ってるんでしょ?

本人がそれで良いなら、口を出す権利はないと思うけど。

折角の一度しかない青春の日々を、そんな過ごし方で浪費するのは、凄く勿体無い気がする。

やっぱり私とは合わないなぁ…。

「い、いやそんなことはないよ。ただちょっと…変わってるなぁって」

「そうですか」

「あ、で、でも、良い意味だからね?決して悪い意味じゃないから」

と、私は念押ししておいた。

危ない危ない。つい本音が。

好きになる要素なんて、一つも見つからないけど…。でも私は今、この人と付き合ってる設定なんだから。

下手に本音を言って、バレたんじゃ意味がない。

内心つまらない人だと思ってるのも、気づかれないように気をつけないと…。

と、思っていると。

「…済みません。僕、ここで失礼します」

結月君が、唐突に足を止めた。
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