星と月と恋の話
第11章
――――――…この、冬休みの間。

結月君は、自分の気持ちに折り合いをつけることが出来ていたけれど。

一方の私は、年が明けようが冬休みが終わろうが、全く気持ちに整理がつかないままだった。

…忘れることなんて、出来るはずがない。

この二週間近く、片時も忘れられなかった。
 
起きている間ずっと、忘れようとすればするほど、ふとした瞬間に思い出す。

あのときの、結月君の軽蔑しきった顔。

優しかったはずの結月君の…豹変した姿。

でも、彼にあんな顔をさせたのは、私なのだ。

私の愚かさと幼稚さが招いた結果なのだ。

私は、結月君のように、身近に相談出来る人はいなかった。

当たり前だ。

私は加害者なのだから、こんな情けないことを、他人に相談なんて出来ない。

「罰ゲームで付き合ってた彼氏にネタばらししたら、手酷く罵倒されて辛かったの」なんて。

情けないにも程がある。誰にも言えない。

おかしな話だ。

私は結月君よりも友達が多くて、相談出来る相手も多いはずなのに。

それなのに、誰にも相談出来ないなんて。

私を心配してくれる人が、いない訳じゃなかった。

クリスマスのあの日、仮病を使ってお疲れ会をサボタージュした翌日も。

風邪は大丈夫か、とか。熱は下がったか、とか。

お疲れ会は何日に延期するか、とか。いつなら空いてるか、とか。

私のスマートフォンには、ほとんど毎日、誰かしらからのメッセージが届いていた。

それなのに、私の心は空虚だった。

誰からEINLが来ても、逃げるような返信しか出来なかった。

むしろ、次々に届くメッセージが、煩わしいとさえ感じた。

お疲れ会なんて、それどころじゃなかった。

時には、既読無視したいと思うほどだった。

あんな風に、結月君と別れて。

自分達が、いかに馬鹿なことをしていたか思い知らされて。

その馬鹿なことをした仲間達と、馬鹿なことをした祝賀会なんて。

あまりに馬鹿らしくて、とてもじゃないけど参加出来なかった。

それ故。

結月君と別れたクリスマスイブが過ぎ、明日から三学期を迎える日になっても。

未だに、お疲れ会は開かれていなかった。

一生開かれないままで良いと思う。
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