星と月と恋の話
無論、私のスマートフォンには、連日EINLが届いていた。

「お疲れ会いつ行く?」だとか、「○日は空いてる?」だとかいう真菜達からのメッセージが、何度も届いた。

だけど、私は何かしらの理由をつけて断っていた。

クリスマスが終わってしばらくは、仮病で誤魔化した。

「風邪じゃなくて、どうやらインフルエンザだったみたい」と嘘をついた。

インフルエンザなんて、小学校以来かかったことない癖に。

この嘘で、一週間近くは誤魔化せた。

でも、いつまでもインフルエンザで誤魔化すことは出来なかった。

インフルエンザが治るであろう時間が経てば、少しは気持ちの整理もついて、お疲れ会に参加出来るかと思ったのだけど。

やっぱり、気持ちに変化はなく。

とてもじゃないけど、お疲れ会に参加出来る心境ではなく。

私は、新たにお疲れ会を断る言い訳を考えなければならなかった。

インフルエンザの後は、いい感じに年末も迫っていたから。

「おばあちゃんの家に泊まりに行くから」という言い訳を使って、私はお疲れ会から逃げた。

あながち嘘ではなかった。

確かに毎年、年末年始になると。

私は両親の実家、つまりおじいちゃんとおばあちゃんの家にお泊りに行くのだが。

実際のところは、毎年、精々一泊か二泊するのが関の山で。

あとはずっと自宅にいた。

今年も、一泊だけおばあちゃんの家に泊まりに行ったけど。

その後は、本当は家にいたのだ。

自分の部屋に引きこもるようにして、何もせず過ごしていた。

冬休みの宿題も、溜まっているのは分かっていたけど…ほとんど手を付けられなかった。

年が明けてから、真菜や海咲から初詣のお誘いや。

ショッピングモールに、福袋を買いに行こうと誘われた。

去年までは当たり前のように、それに応じていた。

しかし、今年は断った。

遠方に住んでるおばあちゃんの家に泊まってるから、という嘘をついて。

本当は、ずっと家にいたのに。

母も、私にショッピングモールに行こうと誘ってきた。

私があまりに自宅に引きこもっているから…少しでも外出させようと思ったのかもしれない。

実際お母さんも、「寝正月ばかりしないで、少しは外に出たらどう?」って言ってたし。

でも、とてもそんな気分になれなかった。

何処にも行く気になれなかった。

ひたすらベッドに転がって、スマートフォンを握って、ダラダラしながら過ごしていた。

そりゃお母さんの目から見たら、寝正月してるようにしか見えなかったことだろう。

だけど、眠ることはほとんど出来なかった。

ただベッドに横になっているだけで、頭の中は別のことでいっぱいだった。

勿論、結月君のことだ。

スマートフォンを握り締めて話さなかったのもそのせいだ。

私は、スマホが通知音を鳴らす度にビクッとして、慌ててスマホを確認した。

この期に及んで。

私は未だに、結月君から何か連絡が来ないかと待っているのだ。

馬鹿みたいだ。

本当に、馬鹿みたい。

付き合ってるときだって、結月君から連絡が来たことなんて、ほとんどなかったのに。

あんな別れ方をした後で、結月君から連絡が来るはずないのに。

それでも私は、彼がコンタクトを取ってこないかと、未だに待ち続けているのだ。
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