星と月と恋の話
「あ…」

こちらを睨んでいるに違いない、と思っていた。

私達を心底軽蔑し、蔑んでいるに違いないと。

…でも。

結月君は、こちらを見てもいなかった。

聞こえていたはずなのに、まるで興味がないかのように、ちらりともこちらを見ない。

ノートとテキストを開いて、明日から行われる授業の予習に集中していた。

…そうね、そうよね。

私達には、もう興味なんてないよね。

下らない罰ゲーム。下らない仲間達。下らないお疲れ会。
 
そんなものに囲まれた私なんて、君の視界に入る価値もない。

好きにすれば良いとでも言うように、私達を完全に無視していた。

…何でまだ、結月君が私に興味を持っていると思ったの。

最初から彼は、私のことなんて気にかけてはいなかった。

だって最初から、あれは罰ゲームと知っていたんだから。

罰ゲームが終わった今、結月君がほんの少しでも、私と接点を持とうとするはずがない…。

…何を期待していたんだ、私は。

これだったら、せめて睨んでくれる方がマシだった。

無視されるよりは、せめて…。

…それでも。

私は、自分から結月君に声をかけることは出来なかった。

彼の周りに、高い壁がそびえ立っているかのようだった。

私はその壁を壊すことはおろか。

彼の傍に、近寄ることさえ出来なかった。
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