星と月と恋の話
…その後、三学期の始業式が終わり。 

早くも放課後を迎えた私達5人は。

学校から少し離れた場所にある、喫茶店に向かっていた。

…結局、断れずに来てしまった。

私が無事、罰ゲームをこなしたことを祝って。

記念のお疲れ会が、今日ようやく開催された。

私が内心沈んでいることも知らず。

真菜達は、私の為にあれこれと注文してくれた。

「はいっ、星ちゃん。アイスティー来たよ」

「あ、ありがとう…」 

「それから…。おっ、来た来た。これを待ってたんだよ〜!」

テーブルの上に、イチゴがたくさん乗った巨大なパフェが置かれた。

たっぷりの生クリームとアイスクリーム、それに分厚くカットしたチーズケーキまで乗っていて、とても豪華だ。

「パフェ来たよ〜!さぁさぁ星ちゃん、好きなだけお食べ!」

真菜が、私の前にパフェのお皿を置いた。

…本当に美味しそうだね。

少し前の私だったら、きっと喜んで、待ち切れないとばかりにスプーンを突っ込んでいたに違いない。

だけど。

今の私は、どんなに美味しそうなパフェを出されても…少しも嬉しいと思わなかった。

正直、今すぐこの場から逃げ出したかった。

何で、何をお祝い出来るだろう。

結月君を傷つけた代償が、このパフェだとでも?

馬鹿みたい。

それでも私には、ここから逃げ出す勇気さえなかった。

スプーンを手に取り、私は黙ってパフェを口に入れた。

美味しいはずのパフェなのに、ほとんど味がしなかった。

アイスクリームの冷たさだけが、口の中にじんわりと広がっただけだ。

「どう?美味しい?美味しいでしょ、ここのは」

「う、うん…ありがと…」

私は曖昧に頷いて、真菜の質問に答えた。

ごめんね、真菜。

折角奢ってくれようとしてるのに、私、全然味を感じないや。

すると、正樹が口を尖らせた。

「おいおい、早速パフェかよ。その前に乾杯が先だろ?」

その言葉に、私はドキッとした。

乾杯?乾杯って何?

「お、そうだな」

「じゃ、改めて」

隆盛と海咲が、自分の飲み物のグラスを手に取った。

皆、何をしようとしてるの?

私は、目の前で起きようとしていることが信じられなかった。

でも、紛れもなくこれは現実だった。

「ほら、星ちゃんもアイスティー持って」

私は、真菜にアイスティーのグラスを持たされた。

何をしようとしてるの、私は?

「よし、それじゃあ…星ちゃんの罰ゲーム終了を祝して…乾杯!」

「かんぱーい!」

…笑顔だった。

皆グラスを掲げて、笑顔だった。

私は、背筋がゾッとした。

皆は一体、何を祝して、何に乾杯しているか分かってるの?

私達は今…他人の不幸を祝して乾杯したんだよ。

あまりのおぞましさに、私は口にしたばかりのパフェを吐き出してしまいそうになった。
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