星と月と恋の話
「いやー、三ヶ月。長かったような短かったような…」

「いや、お前見てただけじゃん」

「それにしても良かったね、星ちゃん。すっぱり別れられてさぁ」

「だよな。しつこく粘着されたら、面倒なことになるところだった」

私以外の四人が、あれこれ話している声が聞こえた。

でも、私はそれどころじゃなかった。

身体が震えていた。

私はなんという人々と一緒にいるのだろう。

だけど私に、四人を責める資格はない。

私だって、ほんの少し前まで…いや。

今も私は、この四人の同類なのだから。

どうして皆を責められるだろう。

今更正論を言ったって。今更説教したって…何もかももう遅いのだ。

終わってしまったことなのだから。

私が少しでも、他人の痛みを知ることが出来ていたら。

こんな下らない罰ゲームを提案する前に、止めていたはずだ。

「しっかし、よく三珠クンなんかと三ヶ月も付き合えたよね。本当お疲れ様」

海咲は、私を励ますように背中を叩いた。

私はされるがまま、何も答えられなかった。

「私だったら絶対無理だったわ」

「って、あんたが星ちゃんに罰ゲーム押し付けたんじゃないの」

「えへ、そうだったっけ?ごめんごめん。ちゃんと終わったんだから良いじゃん」

海咲はペロッと舌を出して、悪戯っぽく笑った。

…何がおかしいの。

皆そんなに笑って、一体何がそんなにおかしいの。

結月君を傷つけて…何が、そんなに楽しいの?

「星野が付き合って初めて分かったけど、色々意外な奴だったよな」

「あ、それは分かる」

「料理と裁縫が得意とかいう、無駄長所が見つかったりね〜」

…無駄なんかじゃないよ。

ちゃんと立派な長所じゃないか。

「でも、予想通りキモいところも見つかったじゃん」

「あー、私服がダサいところとか?」

「それな。和柄の襟とか刺繍とか、ダサ過ぎだろ」

「言えてる」

皆、けらけらと笑っていた。

…ダサくなんてないよ。

結月君はあの服、自分で作ったんだよ。

皆ダサいって笑うけど、同じ服を作ってみろって言われたら、皆何も出来ないじゃん。

自分に出来ないことが出来る人を、どうして笑えるの?

「って言うか私は、公園デートとか、ハイキングデートが有り得ないわ」

海咲がうんざりしたような顔で言った。

「分かる。初デートで公園とか。小学生かよって感じ」

「私、彼氏にそんなデート連れて行かれたら一発で別れるわ」

「超つまんないもんな。しかも、手作り弁当持参とか。所帯染みてるにも程があるだろ」

…つまらなくなんてなかったよ。

そりゃあ、最初は驚きもしたけど。

コスモスは綺麗だった。遊歩道を歩くのも楽しかった。

結月君が作ってくれたお弁当、凄く美味しかった。

私が好物を話したら、わざわざ調べて作ってきてくれたよ。

心がこもってて、私を喜ばせようと朝から頑張って準備してくれたのが分かって。

そこらのレストランのご飯より、ずっと美味しかった。
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