星と月と恋の話
「僕に聞かずに、本人に聞いたらどうですか?」

「傷ついてる奴に、根掘り葉掘り聞くことなんて出来ないだろ。そんな無神経なことは出来ない」

へぇ、そうですか。

控えめに言うけど、あなた最低ですね。

「それを言うなら、僕も傷ついてるんですけど。僕に聞くのは良いんですか?」

「…は?」

無自覚。

さすが、あの下らない罰ゲームの首謀者。

面の皮が厚いにも程がある。

その分厚い面の皮だけで、銃弾防げるんじゃないですか?

「よくも平気な顔して、僕の前に出てこられましたね。…聞きましたよ?星野さんから。僕達が三ヶ月の間付き合ってたのは、罰ゲームの一環だったそうじゃないですか」

説教なら、星野さんにも散々させてもらったけど。

この人も首謀者の一人なんだから、少しくらいお灸を据えておくべきだろう。

ましてやこの人、星野さんの新しい彼氏候補じゃないか。

馬鹿と馬鹿がくっついて、お似合いなことで。

「皆で僕のことを騙して、高みの見物して、楽しかったですか?」

「…それは…」

「楽しかったんでしょうね。でなきゃあんな最低なこと出来るはずがない」

自分達が何をやったのか忘れたか。

謝罪こそされても、責められる筋合いはない。

「傷ついてるって言うなら、あなた方のタチの悪い罰ゲームに巻き込まれた僕も、充分傷ついてますけど?」

想像出来ないか?星野さんと同じく。

想像力が欠如したお友達が多いこと。

類は友を呼ぶ、という言葉は本当らしいですね。

「それなのに、僕を問い詰めるのは良いんですか。何をしても、何を言っても、僕は傷ついてないとでも思ってました?」

傷ついているのは、可愛くて繊細でか弱い、あなたの大好きな星野さんだけだとでも?

あの人が、今更一体何に傷ついているというのだ。

傷つけられたのは僕だ。

「星野さんが傷ついてる?落ち込んでる?僕にとっては朗報じゃないですか。自業自得ですよ。馬鹿なことをするから、その報いを受けてるんでしょう」

師匠の言った通り。

人を傷つけた者は、いずれ自分も傷つくことになる。

僕を傷つけた報いが、今回ってきてるんでしょう。

「それは…。…その、悪かったよ」

…は?

何だ、その謝罪は。

「…三ヶ月も人を騙しておいて、それが謝罪ですか?」

星野さんと言い、この人と言い。

人間性を疑うよ。

一体どういう教育を受けてきたら、そんな厚顔無恥になれるのか。

むしろ教えて欲しいくらいだ。

それどころか。

「他にどう謝れば良いんだよ?騙してたのは悪かったよ。正樹の悪ふざけだったんだ」

開き直って、しかもお友達に責任をなすりつける始末。

その場にいて、そのお友達の悪ふざけを止めなかった時点で、同罪だって知らないのだろうか?

発案者だけが悪いとでも?

脳内お花畑、とはこのことを言うんだろうな。

こんな人間の為に、わざわざ貴重な時間を割いているのが馬鹿馬鹿しくなってきた。

星野さんが落ち込んでいようと、元気がなかろうと、僕にとってはどうでも良い。関係のないことなのだから。

「騙してたことは謝るよ…。罰ゲームに巻き込んだことも。でも、それと星野を傷つけたことは別の話だろ?」

…何を言ってるんだ、この男。

まさかこの件で、僕に謝罪しろとでも言うのか?

何処まで厚顔無恥だったら、そんなことが言えるのだ。
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