星と月と恋の話
…反射的に、ぶん投げてしまったのは良いとして。

人目のない体育館裏で助かった。

「僕はこんなに腕っぷしが強いんです!」なんて、人様にひけらかすようなことじゃない。

カブトムシじゃないんだから。

少なくとも僕は隠しておきたい。

菅野さんが、他の人に喋らなきゃ良いんだが。

まぁ、多分大丈夫だろう。

僕にぶん投げられたなんて、恥ずかしくて人には言えないだろうから。

このことは、君の胸の中に収めておいてくれ。

…それはともかく。

星野さんが落ち込んでる、元気がないという話を聞いて、僕は少し意外だった。

一体何に落ち込んでいるのか知らないが…。

本当に、去年のクリスマスイブ以降から、様子がおかしくなったのなら。

もしかして、僕との別れ話が「効いて」いるのかもしれない。

そんなことを気にするほど、繊細な人間ではないと思っていたのだが。

罪悪感を感じるくらいなら、初めからあんな罰ゲームに参加するべきじゃなかった。

だから自業自得だと言っているのだ。

存分に後悔してくれ。

僕の心の残酷な部分が、もっと苦しめと言っていた。

僕を傷つけた分だけ、彼女も傷つけば良いと。

でも、その一方で。

未だに忘れられない、星野さんの泣き顔を思い出して。

それが脳裏に焼き付いて、離れなかった。

…何考えてるんだ、僕は。

自分には関係ないと、何度言い聞かせていることか。

それでもまだ、忘れられないなんて…。
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