星と月と恋の話
…結月君。

…来て、くれたんだ。

それだけで、私は涙が出そうになった。

メール読んでくれたんだ。

読んだ上で、ここに足を運んでくれたんだ。

たったそれだけのことで、私は泣きそうなくらい嬉しかった。

やっぱり君は優しい人だ。

「…黙っていたら、分からないんですが」

結月君は、険しい顔をして言った。

いけない。ちゃんと喋らなきゃ。

折角来てくれたのに。黙ってたら、結月君が帰ってしまう。

頭の中で準備していたはずの台詞は、案の定記憶から抜けていた。

それでも私は、何とか言葉を紡がなければならない。

自分の気持ちを、ちゃんと伝えなきゃいけない。

「私、結月君に…伝えないことが、あるの」

「何ですか」

…それは。

…。

…言わなきゃ、ちゃんと。

自分の思ってること、ちゃんと。

「…ごめん、なさい」

私は、あの日からずっと言いたかったことを口にした。

謝罪の言葉。

結月君がこんな言葉を求めていないことは、百も承知だ。

それでも、私は謝らずにはいられなかった。

ちゃんと謝ってなかったから。

私は腰を曲げて、深く頭を下げた。

「あんな下らない罰ゲームをして…結月君をずっと騙して…。…馬鹿にして…笑って。本当に幼稚だった。許されないことをした。ごめんなさい…」

「…」

結月君は、何も答えなかった。

頭を下げていたから、結月君が今どんな顔をしているのか分からない。

見ない方が良いだろうと思った。

きっと結月君は、酷く軽蔑した…あの目で、私を見ているのだろうから。

「ちゃんと謝ってなかったから…謝りたかったの。本当に…ごめんなさい。謝っても許してもらえないと思うけど…」

でも、謝らずにはいられなかった。

謝罪する以外に、結月君に少しでも報いることは出来ないから。

「君の優しさにずっと甘えてた…。私が馬鹿だった。君の言う通り浅はかだった。自分達のやってることが、どれほど相手を傷つけるかロ想像することも出来なかった」

もし叶うなら、三ヶ月…いや、もう四ヶ月前か。

あのときの自分を、ぶん殴りに戻りたい。

許されない罰ゲームを提案し、その罰ゲームに悪ノリした自分を。

それがどういうことなのかちゃんと考えろ、と言いたかった。

「…ごめんなさい。結月君…許してもらえないだろうけど、謝りたい。ごめんなさい…」

「…」

私がいくら謝罪しても、結月君からの返事はなかった。

…もう良いよ、なんて優しい言葉を期待していた訳じゃない。

いくら結月君が優しくても。それとこれとは別の話だ。

だって私のしたことは、許されないことなんだから。

謝ったところで許されるはずがない。

許して欲しいなんて、それは傲慢というものだ…。

…すると、案の定。

「…そうやって謝ったら、許してもらえるとでも思ってるんですか?」

口を開いた結月君の、第一声がそれだった。

許されるはずがないことは、分かっていた。

それでも私は、そのトゲのある言葉に胸が締め付けられた。
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