星と月と恋の話
こんなことを言うと、また卑怯だと思われるんだろうけど。

「…結月君が、ずっと罰ゲームのことを知ってたんだって分かって。その罰ゲームのせいで、ずっと結月君を傷つけてたんだって知って…」

「…」

「あれから私、ずっと後悔してた。結月君の私を蔑んだ目が忘れられなかった。あんな目で人に見られたことなかったから」

幼稚だよね。

情けないよね。

本当に、恥ずかしいよ。

でも、今ここで本音を偽ること以上に、恥ずかしいことはないから。

全部、正直に打ち明ける。

「自分がどれほど幼くて、愚かだったか自覚して…。そしてようやく、私は後悔したんだ。あんなこと、しなきゃ良かったって…」

「…今更気づいたんですか」

「うん、今更気づいたの。…私、馬鹿で…ごめんなさい」

「…」

今更気づいたって、遅いよね。

後の祭りだよね。

でも、気づいたからには…。

「謝らなきゃならないと思った。この一ヶ月ずっと、結月君の顔が忘れられなくて、謝らなきゃならないって思い続けて…」

言いたいことが、次々に溢れてくる。

収集のつかない思いが、その思いの丈が、ようやく言葉になって結月君に届けることが出来た。

…もっと早く、こうするべきだった。

「罰ゲームが終わったからって、友達が祝杯をあげてくれようとしたの。でも、出来なかった。喜ぶことなんて出来なかった。…あんなに結月君を傷つけたのに」

他人を傷つけたことに喜んで、祝杯をあげるなんて。

そんな恐ろしいことは、私には出来なかった。

そんな恐ろしいことを平気でしようとする人々が、私の友達なんだという事実も、酷く恐ろしかった。

今更気づいても遅過ぎる。

「あれからずっと、何をしても楽しくない。友達に励まされても、慰められても、何も心に響かない。…私の心にあるのは、君のことだけだった」

「…」

結月君は、何も言わずに聞いていた。

彼は私から視線を逸らしていたけど。

私は、結月君から視線を逸らさなかった。

今向き合わないで、いつ向き合うんだ。

「謝りたかった。謝って…それから、自分の気持ちを…ちゃんと伝えたいと思ったの」

「…あなたの、気持ち?」

「…うん」

と、私は頷いた。

何度考えても、結論は同じだった。

三ヶ月間、罰ゲームの繋がりでしかなくても、それでも君と付き合って。

初めて、君がどんな人なのか知った。

私がこれまで出会った人の中で、君は一番優しくて。信じられないほど優しくて…。

三ヶ月の期限が終わるとき、あんなに後ろ髪を引かれるような思いになったのも。

結月君に蔑みの眼差しを向けられて、あんなに傷ついたのも。

この一ヶ月、ずっと結月君のことを忘れられなかったのも。

何もかも、全部。




「…私、君の事が好きだ」




これが、偽らざる。

紛れもない、私の本音だった。



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