星と月と恋の話
私だってね、これでも頑張ったのよ。

昨日の時点では、まだまだ夢が広がっていた。

何弁当にしようかなー。やっぱり初めてなんだし、定番メニューが良いわよね。

唐揚げ弁当?それともハンバーグ弁当?生姜焼き弁当も良いわね。

って、お肉ばっかり。

肉食系女子です。

わくわくしながら考えて、そのとき家の冷蔵庫にあったのがひき肉だったので。

じゃあハンバーグ弁当にしよう、と決めたまでは良かった。

ハンバーグなら調理実習で作ったんだし、作り方も分かる、とたかを括っていた。

…それが間違いだった。

確かに私は、調理実習でハンバーグを作ったけど。

私はただ、横で観察していただけで。

ほぼ全ての調理過程をこなしたのは、私ではなく結月君なのだ。

見ているだけで、そう簡単に上手くなれるはずがない。

結果。

ハンバーグ弁当とは名ばかりの、消し炭弁当が出来上がった。

震える手で、菜箸を使ってその消し炭を半分に割ってみたら。

外は真っ黒焦げなのに中は生焼けという、地獄みたいなハンバーグになってた。

涙が出そうだった。

ならばとばかりに、今度は卵焼きに着手した。

お弁当と言えば、卵焼きとタコさんウインナーは定番よね。

え?タコじゃなくても良いじゃんって?

タコは重要よ。

そこで私は、まず卵焼きに挑戦してみた。

目玉焼きくらいなら作れるんだし、同じ要領で卵焼きも楽勝、なんて。

思っていた時期が、私にもありました。

全然楽勝じゃなかった。

焦げまくって、フライパンにくっつきまくって、あちこち破れて真っ黒焦げだし。

何とかお布団みたいに、卵を綺麗な形に折り畳もうとするのに。

写真で見るみたいに、ふっくらとした卵焼きにならない。

結果。

出来上がったのは、ぺちゃんこに押し潰され、真っ黒な座布団みたいな卵焼き。

と言うか、焦げたスクランブルエッグと言った方が正しい有り様だった。

三度目の正直とばかりに、タコさんウインナーは頑張ろうと思って。

昨晩動画で見た、タコさんウインナーの簡単な作り方を参考に。

包丁を片手に、ウインナーをタコさんの形に切ろうとしたけど…。

出来上がったのは、タコさんと言うより。

エイリアンウインナー、みたいな有り様。

ついでに言うなら、彩りの為に入れた茹でブロッコリーも。

茹で時間を間違えたのか、箸で摘まむとボロボロ崩れてしまうほど、クタクタのブロッコリーになってた。

もうね、ここまで何一つ出来なかったら、むしろ開き直れそう。

結局、見るに見かねたお母さんが、途中から助け舟を出してくれて。

卵焼きは焦げたところを避けて、出来るだけ綺麗なところだけを入れ。

ブロッコリーとウインナーはしょうがないので、そのままアルミカップに入れ。

ハンバーグは、とても食べられそうにないので、心苦しいがゴミ箱に捨て。

代わりに、冷凍食品のハンバーグを詰めた。

余ってる隙間も、全部冷凍食品よ。

あとは、ご飯にふりかけをかけて持ってきた。

どうよ。

笑いたいなら笑いなさい。

まぁ、笑ったらおへそに箸を突き刺すけどね。
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