星と月と恋の話
3分後。

結月君は、無事に戻ってきた。

けど、眼鏡外れてた。

「大丈夫…?」

「はい。今日はまだ平和な方ですから」

これの何処がよ。

もっと酷い日があるの?

「月に一度、四週目の水曜日はもっと凄いんですよ」

「そ、そうなの…?」

「はい。このスーパーで一番お得なセール日でして…。毎月欠かさず、その日は買い物に来るんです」

す、凄いわね。

私なんか、もう今日のこの日を見ただけで、二度と水曜日に来たくないと思うけど。

「僕はもう慣れましたが…。星野さんには厳しいかもしれません」

「うん、分かった。じゃあ毎月四週目の水曜日だけは、私は決して買い物に来ないわ」

どんなに割高でも、よそのスーパーか、コンビニで済ませるわ。

背に腹は代えられないもの。命は大事よ、命は。

「で、これで僕が今日買いたいものは、全部買ったんですけど…」

あ、そうなんだ。

「星野さん、他に欲しいものは?」

「えーっと…。冷凍食品コーナー、見に行っても良い?」

「あ、はい分かりました。…冷凍食品のセール日は金曜日なんだけどな…」

そう。お得な情報をありがとう。

でもそれって、金曜日に来たら、冷凍食品コーナーが、さっきの野菜コーナーや精肉コーナーみたいな惨状になってるってことでしょ?

私、まだ命が惜しいから。

案の定、冷凍食品コーナーは驚くほど閑静だった。

そうそう、これよ。こういう静かな買い物がしたいのよ私は。

今日が冷凍食品のセール日じゃなくて良かったわ。

「お弁当に入れるの、どんな冷食が良いかな〜」

「何が良いですかね」

「結月君、お弁当におすすめの冷食ない?」

「さて…。僕、冷凍食品をお弁当に入れることがないので…」

…お主。

一度で良いから言ってみたいわ。「私、お弁当に冷凍食品なんて入れないから」って。

良いじゃないの、冷凍食品が入ってたって。

最近の冷食、どれも美味しいもんね。

「冷凍食品も入れないで、お弁当のおかずに困ることってないの?」

「大抵は、昨晩の残りを入れて…。残ってないときは、冷凍してある食材で何かしら簡単なものを作るようにしてますから、困ることはないですね」

食材を冷凍してるなら、それが冷凍食品ってことにしよう。

夕飯の残りを、明日のお弁当に…か。

無駄がないなぁ…。

私には、とてもじゃないけどそんな高等テクは使えないから。

「…私は大人しく、冷凍食品に頼るわ」

美味しいもの。冷凍食品。

冷凍食品万歳よ。
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