星と月と恋の話
「大体、喋るときもいつまでも敬語だし。普通に喋ったら?」

「え、え、ふ、普通じゃないですか?」

敬語じゃないのよ。

それともあなたは、敬語がデフォルトなの?

「他の人ならともかく、結月君は彼氏なのよ?奥手なのは知ってるけど…。もう少しガツガツして良いと思うわよ」

「そんな…。失礼じゃないですか。女性相手に」

「…」

…成程ね、よく分かったわ。

「結月君。君は、もう少し、肉食になるべきだわ」

「に、肉食って…?」

「今のあなたは、草しか食べてないんだもの。きっと前世はシマウマね」

「シマウマ…!?えぇ…。もうちょっと恰好良い動物が良かった…。…ライオンとか…」

「君にライオンは無理よ」

片腹痛いわ。

むしろ、ライオンに捕食されたシマウマよ。

「とにかく、他人行儀は呼び方はやめてよ」

「そ、そうですか。じゃあ、その…下の名前は、何だか図々しい気がするので…」

何でよ。

彼氏が下の名前で呼ばないなら、他の誰が私を下の名前で呼ぶのよ。

家族だけ?

「じゃあ、星さんで」

しかも、あんまり変わってないし。

さん付けは他人行儀だって、さっき言ったじゃない。

…まぁ、いっか。

「分かったわ。それで良いわよ」

それが結月君なりに、親しみを込めた呼び名のつもりなら。

でも、いつか絶対下の名前で呼んでもらうからね。
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