星と月と恋の話
「朝からランニングなんかして、結月君は何を目指してるの…?」

「え、な、何も目指してはいませんけど…」

「もう、陸上部入ったら?長距離走で活躍出来るわよ、きっと」

部活にも入ってないのに、自主的に毎日、早朝ランニングしてるなんて。

陸上部の顧問からしたら、喉から手が出るほどの逸材でしょうに。

「そんな…。僕なんて、まだまだですよ」

謙遜するし…。

「そういえば、短距離も速かったっけ…」

もやしっぽく見える割には、運動神経良いのよね、結月君って。

人は見かけに寄らないって、あれは本当なのね。

「ついでに、凄く握力も強いんだっけ?」

「え?」

思い出す。あのクリスマスイブの日。

別れのときのアレが印象的過ぎて、忘れかけてたけど。

あのとき私、確か変な人に絡まれたのよね。

結月君が、あっという間に撃退してくれたんだっけ。

あのとき確か、凄い握力でお兄さんの手を掴んでなかった?

「握力いくらあるの?結月君って」

「握力ですか?えーと…いくらだったかな…」

「ほら、春に体力測定するとき、握力の項目あったでしょ?」

私の握力は、精々20キロ台前半だったけど。

結月君はどれくらいあるんだろう。

50キロとか?凄いよね。

「あぁ、あのときは確か…70半ばくらいあったかな…?」

まさかの、私の4倍近く。

「…ごめん、やっぱり、もう一回訂正して良い?」

「な、何をですか?」

「君の前世。やっぱりゴリラだわ」

「ごっ…。そ、それは…嬉しくないんですが…」

だって、ゴリラもかくやという握力じゃないの。

「りんご潰せるんじゃないの?」

「え、何でそんな勿体ないことを?」

比喩よ、比喩。

本当に潰せとは言ってないわ。

「でも、僕なんてまだまだですよ」

「何処がよ?」

「だって、僕の師匠は多分もっと…」

…師匠?

って何よ?

何だか、知れば知るほど、結月君に関する謎が深まっていく気がするわ。

「あ、それより着きましたよ」

なんて言ってる間に、目的のゲームセンターに到着。

行きつけって訳じゃないけど、真菜達とゲーセンで遊ぶときは、いつもここを利用している。

「よし、じゃあ行きましょうか」

「…僕達、不良に見られてませんよね…?」

「…大丈夫よ…」

君は、本当に…ゲームセンターを何だと思ってるのよ。
< 301 / 458 >

この作品をシェア

pagetop