星と月と恋の話
「へぇ、これがアイシングクッキー…。…お洒落ですね、カラフルで」

「でしょ?」

見た目も可愛いし、食べても美味しいんだよ。

「これは…砂糖細工で色を付けてるんですかね…」

なんかブツブツ呟いてるし。

砂糖細工って。

「これが、星ちゃんさんの一番好きな食べ物なんですか?」

「ん?そうだなー…。あとはほら、そうだ、これも好きだよ」

私はスマホをタップして、別の写真を出した。

アイシングクッキーも好きだけど、最近のお気に入りは他にもある。

「これは…サンドイッチですね」

「そ。フルーツサンドだよ」

これも、最近の流行りだよね。

あちこちに専門店が出来て、よく真菜や海咲と一緒に食べに行くんだ。

私のお気に入りは、イチゴとバナナを挟んだフルーツサンドかな。

「フルーツサンド…?あ、具材にフルーツを挟んでるんですね」

…。

…まさか結月君って、フルーツサンドすら知らないの?

…食べたことなさそう…。

「結月君、フルーツサンド食べたことないの?」

「ないです。普通のサンドイッチなら食べますけど」

やっぱり。

ことごとく、お洒落な食べ物とは無縁なんだね。

今日日フルーツサンドなんて、コンビニでも売ってるのに。

流行に興味ないのかなぁ?

「そうなんだ。今、これが流行りなんだよ。色んなところに専門店が出来てたり…」

「…」

「…結月君?」

何で黙るの?

興味なかった?

「…星ちゃんさんは、色んな流行を追うんですね」

「え?」

「タピオカとか、ナタデココとか好きじゃなかったですか?」

…ムカッ。

何よ。これが流行ってると聞くや、すぐに飛びつく安い女に見えたの?

そりゃ、タピオカはハマってたけど。

でもナタデココって、いつの時代よ。

私がミーハーなんじゃなくて、結月君が時代遅れ過ぎるの。

「好きだけど…何かいけない?」

「いや、いけないことはないですよ」

でしょうね。

流行に遅れないことの、何が悪いのよ。

「…じゃあ、星ちゃんさんの好きな食べ物は甘いものなんですね」

と、結月君は言った。

え。そういう訳じゃないけど。

でも、そっか。私が今言ったのって、全部甘いものばっかりだったもんね。

「甘いものは好きだけど…。でもそれだけじゃないよ」

「普通の家庭料理の中だったら、何が好きなんですか?」

家庭料理かぁ…。 

何が好きだろう。

「うーん…。卵焼きかな?」

「卵焼き…。甘い卵焼きですか?」

「いや、出汁巻き卵」

私も、結構渋いかな?

でも、咄嗟に出てきたのがそれだった。

「あと、ロールキャベツも好きだよ」

「ロールキャベツですか…美味しいですよね」

…なんか、結月君の好きな食べ物を知るつもりが。

結局、私の方がたくさん喋っちゃった気がするね。
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