星と月と恋の話
好きな食べ物、は聞いたので。

今度は別の話題を提供しよう。

「結月君って、好きな芸能人誰なの?」

真菜が言ってたよね。好きな芸能人聞いたらどうかって。

しかし、私は甘かった。

「あ、済みません…。僕テレビをほとんど見ないので、芸能人とかよく分からないんです」

…そうだった。

ニュースしか見ないって言ってたもんなぁ…。

そりゃあ、芸能人なんて知ってるはずがない。

「そ、そっか…」

じゃあ芸能人どころか、好きなテレビ番組を聞くのも無駄か。

しかし、ネットもしない、テレビも見ないで、普段結月君って、家で何してるんだろ。

家事とか勉強ばっかりしてるのかな?つまらなさそう…。

「えぇっと…それじゃ…漫画は?好きな漫画」

これだ。

さすがに、流行りの漫画くらいは読んでるんじゃないか。

私自身はあんまり、漫画は読まないんだけど。

もし結月君が漫画好きなら、その話題でしばらく持ちこたえられる。

と、思ったけど。

やっぱり、私は甘かった。

「漫画は読みませんから…よく知らないです」

「…」

漫画も読まないとは。

本当に、本ッ当に、家で何してるのか気になる。

きっと、私には耐えられないような一日を送ってるんだろうな。

「…でも、本ならたまに読みますよ」

おっ。

ちょっと希望が見えた。

「本?活字の本?」

「はい」

活字の本かぁ…。私、活字の本はあんまり読まないんだけど…。

でも、映画化されてる本とか、ドラマ化された本なら、たまに手に取ることがある。

「私もたまに読むよ。前読んだのは…あ、ほら。去年実写映画化された、恋愛小説…」

「僕が読むのって、基本的にはノンフィクションの戦争小説なんです」

「…」

とことんまで、合わない。

ノンフィクション…?しかも戦争…?

何でそんな、難しそうな…私には1ページどころか、3行も読めなさそう。

絶対つまんないよ。

歴史モノなんて、小学校の頃、漫画で読む偉人シリーズを読んだのが最後だったかも。

「あと、指南本も読みますね。『猿でも分かる!』シリーズっていう」

「そ、そんなのあるの…?」

聞いたことがないんだけど。

本でさえ、好みが合わない。

他に話題…話題を提供するしかない。
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