星と月と恋の話
日曜日。

僕はこの日、久々に加賀宮さんのところを訪ねた。

星さんと一緒に、ゲームセンターに行ったときもらった、例の白猫のぬいぐるみ。

これを加賀宮さんに渡す為に来た。

あとは、まぁ。

珍しく、ちゃんと稽古つけてもらおうかなと思って。

「こんにちはー…。って、また新聞溜まってる…」

新聞と。郵便物を。ちゃんと回収しましょうよ。

重要なハガキとか来てたら、どうするんですか。

それから、インターホン押したらちゃんと出てください。

お陰で僕、毎回勝手に入っちゃうことになって。不法侵入みたいになってる。

「お邪魔しますよ」

「…ん?あぁお前か…」

お前か、じゃないですよ。

いるのなら返事をしてください。

居留守ですか。

…それよりも。

「…何なんですか?この部屋…」

「?何が?」

「何でこんなに汚いんですか?」

勝手に家に上がっといて、こんなこと言うのは失礼かもしれないけど。

物凄く散らかってる。

何だろう。床に落ちてるもの、全部拾ってゴミ袋に叩き込みたい気分。

この人が、全く掃除が出来ない人だということは、既に百も承知だが。

しかし、この家には家政婦が定期的に通ってくれているので。

その家政婦さんのお陰で、家の中が酷く散らかってる…ということはないはずなのだ。

それなのに、今日のこの汚さは何だ?

床なんて、埃が積もってて目も当てられない。

「家政婦さんは?どうしたんですか」

「あぁ。インフルエンザになったとかで、一週間くらい休んでる」

成程、よく分かりました。

家政婦さんが一週間来なかっただけで、これですよ。

全く、少しは自分で掃除をしてみようとか、そういう気概はないものですか。

白猫のぬいぐるみを渡す…どころじゃないですね。

世の中には、優先順位というものがある。

僕は師匠じゃないんでね。

こんな汚い部屋に、腰を下ろしたくない。

「…じゃ、掃除しますね」

「えっ」

えっじゃない。

とりあえず、この床に散らばった新聞とチラシの残骸を何とかするところから始めましょうか。
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