星と月と恋の話
「ふぅ…」

およそ、一時間半が経過し。

ようやく家の中が、見られるようになってきた。

溜まっていた洗濯物を、まとめて洗濯機にダンクシュートし。

はたきを片手に、部屋中を走り回り。

その後は、全ての部屋に掃除機をかけた。

ついでに廊下と窓を雑巾がけし。

ようやく、人の住める家になった。

本当は、浴室のカビとか、玄関に溜まった煤とか、庭の掃除とか、他にも色々気になるところはあるのだけど。

そこまで全部やっていたら、キリがない。

よって、とりあえずここまでで終了。

とりあえず、腰を下ろせるくらいには綺麗になったかな。

「全く…。たまには掃除くらいしましょうよ」

「…面目ない…」

そうですか。

僕はキッチンを借りて、自分でお茶を淹れて持ってきた。

ふぅ。やっと人心地ついた。

「…あ、そうだ」

思い出した。

僕は、持ってきたぬいぐるみを取り出した。

「これ持ってきたんですよ。お嬢さんに送ってあげてください」

「…?ぬいぐるみ?」

「はい」

白猫のぬいぐるみである。

僕の家にも、一匹いる。

図らずも、お嬢さんとお揃いになってしまうのだが。

まぁ、そこは気にしないでもらおう。

「わざわざ買ってきたのか?」

「いや、もらったんです。先日ゲームセンターに行ったんですが、そこで知人に…クレーンゲームで取ってもらったんです」

「…くれーんげーむ…」

クレーンゲームをご存知でない、僕の師匠。

「要するに、もらい物なので気にしないでくださいってことです。僕が持ってても仕方ないので、お嬢さんにどうぞ」

「そうか、分かった…。じゃあ有り難く…。今度送っておく」

「えぇ、そうしてください」

喜んでもらえると良いんですが。

女の子が好むキャラクターとか、僕にはよく分からないので。

「…しかし、お前がそういうところに行くのは珍しいな」

「えぇ、僕も初めてだったんですけど…。彼女に『ゲームセンターデートしよう』って誘われて」

「ぶはっ」

お茶を噴き出された。

人が折角淹れてきたお茶を、あなた…。
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