星と月と恋の話
「結月君は良い人だよ。ただ、皆が知らないだけ」

「…俺よりも、ってことか?」

え?

「俺じゃなくて、あいつを選ぶってことは…そういうことだよな。俺よりあの冴えない三珠の方が良いってことだ」

「そういうのじゃないよ。何でそうなるの?」

取り合いをしてる訳じゃないんだから。

結月君は結月君。隆盛は隆盛。

片や彼氏で、片や男友達。

比べられる訳がない。

「隆盛は大事な友達だよ。隆盛には、結月君とはまた別の良いところがあるじゃない」

「でも、三珠の方が良いんだろ?だから三珠と付き合うことにしたんじゃないか」

「結果的に、隆盛の…気持ちに応えられなかったことは、申し訳ないと思ってるよ」

有り難いことに、隆盛も私のこと好きだって言ってくれたんだもんね。

その気持ちに応えてあげられなかったのは申し訳ない。

隆盛だって、私には勿体ない人だと思ってる。

結月君と隆盛の二人を天秤にかけるなんて、贅沢な悩みだよ。

隆盛には隆盛の良いところが、たくさんあるって知ってる。

だけど私が好きになったのは、結月君だから。

それは別に、結月君と隆盛を天秤にかけて、結月君の方が良いと思ったから結月君にした訳じゃない。

そういう決め方はしてない。

ただ結月君が好きだから、結月君に告白しただけだ。

隆盛のことは関係ない。

比べてもいない。比べようとも思わない。

「私が結月君を好きになっただけ。隆盛は関係ない」

「何であいつなんだよ?悪いけど、俺とあいつを比べて、星野が何であいつを選んだのか、まるで理解出来ない。あんな奴、星野には全然釣り合わないだろ」

…真菜達と同じこと言うのね。

私と結月君が釣り合わないって。

私が結月君に釣り合わないんだよ。

「結月君は良い人だよ」

「そりゃ頭は良いのかもしれないけど。俺があいつに負けてるところなんて、それだけだろ?」

どうかな。女子力でもだいぶ負けてると思う。

このクラスで、結月君より女子力の高い男子がいるとはとても思えない。

まぁ、女子力の如何は大して関係ない。

強いて言うなら。

「結月君は絶対に、『あいつに比べて俺の方が勝ってる』とか『負けてる』とか、そんなこと言わないよ」

「…!」

それが、結月君と隆盛の違いかな。

結月君は、私達よりずっと大人だ。

馬鹿みたいな罰ゲームを提案したり、そんな罰ゲームに悪ノリしたりしない。

それが私達との違いだよ。

そしてそういうところが、私にとって魅力的に見えたんだと思う。
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