星と月と恋の話
隆盛は、悔しそうに唇を噛み締めていた。

自分が結月君に負けた、と思ってるのかもしれないけど…。

そんなことはない。

私が、たまたま結月君を知る機会に恵まれて、結月君のことが好きになったってだけで。

隆盛には、隆盛の良いところがちゃんとあるんだから。

そこを見てくれる人は、絶対いるはずだよ。

「隆盛に好きだって言ってもらえて、凄く嬉しかったし、光栄だと思ったよ。でも、私が好きなのは結月君なんだ」

「…」

誰が何と言おうと。

釣り合わないと言われようと、私が結月君に釣り合わないのは百も承知。

そもそも、天秤にかけて丁度釣り合いの取れるカップルなんて、なかなかいないと思うよ。

「隆盛の気持ち、応えられなくてごめん…。これからも…友達として、仲良くしたいと思ってるよ」

嫌なことを言ってしまっただろうか?

あなたの気持ちには応えられないけど、友達としては仲良くしたいなんて。

でも、それが今の私の気持ち。

誰に何を言われても、私の気持ちは変わらない。

申し訳ないけど。

「…」

隆盛は、口を真一文字に閉じて黙っていた。

「お願い、隆盛。怒らないで」

「…別に怒ってなんかいない。ただ…これだけは言わせてくれよ」

「…何?」

「どう考えたって、あいつは星野に相応しい人間じゃないよ」

…そんな。

どうして…そんな悲しいことを言うの。

「探せば良いところもあるのかもしれないけど。でも、いつも明るくて、皆のムードメーカーになる星野と…クラスで一番、いや、学年で一番地味なあいつは、絶対相応しくない。長くは続かないよ」

「…隆盛…」

「あいつの口車に乗せられるなよ。…あんな奴…何考えてるか、分かったものじゃないんだから」

捨て台詞でも吐くように、そう言い残して。

隆盛は、苛立った様子でその場を立ち去った。

…何だって皆そういう風に言うのか。

私はともかく。

結月君が一体何を悪いことをしたって言うの…?
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