星と月と恋の話
「…私は何も隠してないわよ?」

最後の足掻きとばかりに、真顔ですっとぼけてみる。

「…そうなんですか?」

「えぇ。私は何も疚しいことはない。何も隠してないからね」

「…そうなんですか」

「そうよ」

分かってもらえたかしら。

良かった、これで何とか誤魔化しきれた…。

…かと思われたが。

「…星さん、ちょっと手を上げてもらって良いですか?」

え?

「手を上げる?」

「はい、ちょっと万歳して」

万歳?何で?

不思議に思いながらも、私は両手を上げる。

「じゃあ失礼しますね。…あ、これは僕が悪いんじゃなくて、見え透いた嘘をついた星さんの自業自得ということで」

「ふぇ?どういうこ…って、ふぁあひゃひゃひゃひゃ!」

両手を上げた私の両脇を。

こちょこちょこちょ、とくすぐられた。

ちょ、ま、死ぬ、死ぬって。

「ふひゃひゃひゃ!ひょ、らめ、あふひゃひゃひゃ!」

「知ってますか?くすぐりっていうのは、大昔から行われてきた、れっきとした拷問術でして…」

「ちょ、まっ…ひゃひゃひゃ!や、わかっ、ふひゃひゃひゃ」

「口を割るまで延々とくすぐり続けたそうです。相手を傷つけることはなく、しかも被拷問者は笑い続けているという拷問らしからぬ滑稽な絵面なので、昔からあらゆる拷問で使われて…」

「ぷきゃ、あひゃひゃひゃ!わかっ…分かったはらぁ!」

「僕とてこんなことはしたくないんですよ…?えぇ、したくありませんとも。しかし星さんが嘘を付くから仕方ない。…えぇ、仕方ないんです」

「た、楽しんでな…。たのしんれない!?ねぇ、結月く…ぶひゃひゃひゃ!」

私は結月君にくすぐられながら。

みっともなく、半泣きで許しを請うのだった。
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