星と月と恋の話
結月君と二人で、歩いて帰りながら。

「…さっき聞こえちゃったんですけど」

と、結月君が切り出した。

「え?何?」

「唯華さんって、もうすぐ誕生日なんですか?」

あ、聞こえてたか。

まぁ良いや。彼氏にも知っておいて欲しいよね。

「うん。3月の下旬なの」

「そうですか…。…何かしてあげたいですけど、先に学年末テストなんですよね」

「うっ…。それは思い出させないでよ」

「いや、テストは大事でしょう」

ごもっとも。

私も今年は、少しくらい真面目に勉強…。

…しようと思いながら「やっぱり来年頑張ろう」と全てを諦めてしまう現象が、毎年起こってる。

「何か欲しいものってあります?」

「結月君のセンスに任せるわ」

と、私は真菜と海咲に言ったことを、結月君にも言った。

何なら、結月君って私よりセンス良いから。

結月君のお任せにした方が、嬉しいプレゼントをもらえそうな気がする。

「成程、そう来ましたか…」

うんうん。そう来る。

「…試験勉強と並行するので、大したことは出来ないかもしれませんけど…。努力はします」

「うん、そうしてくれると嬉しいな」

「…それと、ケーキ作りますよ。何ケーキが良いですか?」

え、マジで?

ケーキ作ってくれるの?

彼氏に誕生日ケーキを作ってもらうなんて、女の子の夢だよね。

「そうだな〜。うーん…」

ここは、やっぱりスタンダードにデコレーションケーキ?

それともガトーショコラとか?チーズケーキも良いよね。

あるいは…パイやタルト系?アップルパイとか、いちごのタルトとか。

いやいや。

「んー。結月君に任せる!」

「…またですか…」

うん、まただよ。

私は誕生日だから、もらうだけ。

ぜ〜んぶ結月君にお任せ。

「大丈夫だよ。結月君の作るものなら、何でも美味しいから」

「そう言ってもらえるのは有り難いですけど、僕、洋菓子を作るのはそんなに得意じゃないので…。…あんまり期待しないでくださいね」

またまた〜。

この間のおからクッキー、めちゃくちゃ美味しかった癖に。

「うんうん。期待してるから宜しく!」

「…」

そんな、苦虫を噛み潰したような顔しないで。

今から誕生日が楽しみだな〜。
< 393 / 458 >

この作品をシェア

pagetop