星と月と恋の話
「友達として付き合うのは良い。でも…私は、結月君を裏切るような真似は出来ないわ」

もう二度と結月君を傷つけたくはない。

私は、はっきりと自分の気持ちを理解している。

隆盛を選ぶことは出来ないと。

「どうしても駄目なのか?」

「…どうしても駄目よ。悪いけど…」

「…そうまでして…。…何でそこまであいつが良いのか、俺には分からないよ」

そう。

別に構わない。他人に分かってもらう必要はない。

「大体あいつは…今日は星野の誕生日なのに、彼女の誕生日を祝うことさえしてないじゃないか」

「しょうがないわよ。今日は試験の日なんだから」

結月君に限らず、大抵のクラスメイトにとっては試験が最優先に決まってる。

「試験と星野の誕生日と、どっちが大事なんだよ?」

そんな、「仕事と私とどっちが〜」みたいな…。 

「馬鹿ね。誕生日なんていつでも祝えるでしょ?試験は今日しかないんだよ」

ましてや結月君は、私達より遥かに成績を重視してるんだから。

来年度も学費免除枠を維持するには、試験で良い成績を取らなければならない。

私の誕生日より、ずっと大事なことだ。

私だって、結月君が私の誕生日を優先して、そのせいで勉強を蔑ろにして欲しくない。

誕生日のことなんて後回しで良いから、試験に集中して欲しかった。

だから、これで良いの。

試験の時期と被ってさえいなかったら、結月君だって今日お祝いしてくれたはずだよ。

別に当日じゃなくても、後日祝ってもらえるんだから、私は満足だ。

「だからって…。星野のことを平気で二の次に出来る時点で、あいつに誠意があるとは思えない」

変な話。

結月君は、誠意の塊みたいな人なのに。

「ついこの間だって…星野が授業中に倒れたっていうのに、気遣いもせずに罵倒してたじゃないか」

あぁ、ダイエットのときのこと?

「あれは私のせいよ。自業自得よ」

「だからって、あんなに責めることないだろ」

それだけ心配をかけたってことよ。

って言うか結月君は、本来あれくらい口の悪い子なのよ。

心を許すまでは、猫被ってるから。

私に対しては心を許してるんだと思うと、むしろ嬉しい。

「それに、ちゃんと気遣ってもらったわ」

心配してた、って言ってくれたし。

そもそも、心配をかけるようなことをする私が悪い。

「…そんなに、あいつのことが…三珠のことが良いのか?」

「そりゃそうよ。彼氏だもん」

「…俺よりも、ってことか?」

「…比べられないわよ。結月君は彼氏で、隆盛は友達なんだから」

って、前にも言ったじゃない。

何度聞かれても、何度考え直しても、結論は同じ。

私は結月君を選んだ。答えはそれだけ。

…こんなにも私のことを思ってくれている隆盛には…申し訳ないけど。
< 402 / 458 >

この作品をシェア

pagetop