星と月と恋の話
「うう…。だってしょうがないじゃない。古典も数学も苦手なのよ…」

「むしろ、得意な科目ってあるんですか?」

酷い。

「私にだって得意科目くらいあるわよ」

「ちなみに、何の科目ですか?」

「…。…美術?」

「…副教科じゃないですか…」

良いじゃない。芸術の心があるのよ、私には。

一番点数高かったの、美術だったんだもん。

他が低過ぎただけかもしれないけどね。

「唯華さんの選択科目、美術だったんですね」

「そうよ。結月君は?」

「僕は音楽です」

ちょっと意外だったわ。

「音楽も試験あったの?何点だった?」

「座学の試験はありましたよ。…簡単だったので、100点満点でした」

結月君に頭が上がりません。

私より、遥かに芸術の心を持ってるわね。

「何で君は…。そんなに勉強出来るのよ…」

「それだけ真面目に勉強してるからじゃないですか?」

「ぐふっ」

痛い。正論が痛いわ。

そんな真っ当なことを言わないで。

さすが特待生。勉強に対する意気込が違う。

のほほんと学生生活を送ってる私とは、訳が違うのよ。

「今は良いとして、来年度も赤点ギリギリで生きていくつもりですか?」

「うぅ…。私だって、真面目に勉強出来るものならしたいわよ…」

「…丁度良いので、今ここで勉強しましょうか」

えっ?

「折角、目の前に特待生がいるんですから。家庭教師じゃないですけど、何でも聞いてください」

「え?え?」

いや、でも。

私、今日は結月君と遊ぼうと、

「まずは復習ですね。学年末テストの復習。分からなかったところを、分からなかったままにしない。勉強の基本ですね」

「え、いや、でも」

「ほら、さっき隠蔽した解答用紙を見せてください」

「や、ちょっと、それは」

「思い立ったが吉日。さぁ、始めましょう。…しかし改めて見ると、酷い点数ですね。僕だったら切腹してますよ」

「うぇぇ?」

と、抗議の奇声をあげたが聞き入れられず。

「ほら、鉛筆を持って。テキストを開いて。まずは基礎からおさらいしましょう」

「いやぁぁぁ勉強したくない」

「我儘言わないんですよ。子供じゃないんだから」

お子様扱い。

…こうして。

私達のお家デートは、強制的に、結月君主催の勉強会に成り果てたのだった。
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