星と月と恋の話
しかも、この家庭教師結月君。

結構スパルタだった。

「こ、こう…?」

「違います。さっき教えたでしょう?そこはこの公式を使うんですよ」

「そ、そっか…。じゃあ答えは…えぇと、3分の22…?」

「何処から出てきたんですか、その数字は」

「じゃあ…5分の68…?」

「まず分数じゃありませんから。はい、もう一回計算し直し」

ふぇぇ。

更に、数学以外でも。

「え、えぇと…。『その日は、彼の武器を連れて…戦争しました』?」

「何、犬の散歩感覚で戦争してるんですか。何処をどう訳したらそうなるんです」

「だ、だって、そういう意味じゃないの?」

「単語には複数の意味があるんですよ。ちゃんと複数の意味を全部覚えて、場合によって使い分けないから、そんな訳の分からない訳文になるんです」

うぇぇ。

怒られてばっかで、泣きたい。

「分からない単語を見つけたら、きちんと辞書を引く。そして調べて、覚える。これを怠ったら、永遠に古典の問題なんて解けませんよ」

「うぅ、面倒臭い…」

「文句を言わない」

「…はい…」

お家デートで、キャッキャウフフする予定が。

半泣きで勉強させられてるなんて。

何でこんなことに。

つくづく、解答用紙を早めに封印しておかなかった自分を呪った。

「ほら、また余所事考えてるでしょう。手が止まってますよ」

「は、はいっ」

「ちゃんと集中して。こんな調子じゃ、永遠に終わりませんよ」

「はい…済みません…」

「じゃあ次の問題。はい、しっかり読んで」

「…」

自分の家なのに、逃げ場の私は。

諦めて、半泣きで復習に励むのだった。
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