星と月と恋の話
そんな感じで、二時間ばかりかけて、徹底的に勉強させられ。

「まだまだ指導するところはありますが、とりあえず、今日はここまでにしておきましょうか」

スパルタ家庭教師が、ようやく私を解放してくれた。

長かったよ。

ニ時間だよ?二時間も勉強するなんて。

軽く一本映画が観られる時間じゃない。

なんて文句を言ったら、結月先生に怒られるから言わないけど。

そもそも、文句を言う元気も残ってないよ。

私はもっと仲良く…和気あいあいと時間を過ごしたかったのに。

何が嬉しくて、こんなことに。

気がついたら、もうお昼じゃないのよ。

「お腹空いたよぅ…」

「何か買ってきましょうか?」

「ううん…。今日はね、私がホストだから…。結月君にお昼ご飯作ってあげようと思って…」

「え。そんなこと考えてたんですか?」

考えてたのよ。

折角、彼氏を家に招いたんだからね。ちゃんともてなしてあげようと思ったの。

「ごめんね、ちょっと焦げちゃった…。」「大丈夫、すっごく美味しいよ。」的な、恋愛漫画みたいな展開を想像してたの。

それが一転。

私は、打ち上げられた魚のような有り様。

「無理しなくて良いですよ。材料さえあれば、僕が作りますから。台所貸してもらえれば」

何故か、お客さんが自分で料理を作ろうとしている。

おかしいって。

「大丈夫…。私が作るわ」

折角、結月君を家に招いてるんだから。

私がやるわ。

大体いつも、結月君ばっかり美味しいもの作ってくれて。

私はちっともお返し出来てないんだから。

今日くらいは、私がもてなしたい。

「そうですか…。じゃあ、お任せします」

「えぇ、任せて…」

「手伝えることがあったら、呼んでください」

そうね。でも結月君に手伝ってもらったら、自分でやる意味がなくなるから。

今日は、一人で作ってみるわ。
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